2015年度第2回スピーカーシリーズ
「英国における日本食・日本酒事情」
2015年12月4日(金)15:30~17:30
講師:ジェトロ・ロンドン事務所 島本 健一氏
酒サムライ(日本酒造青年協議会)英国代表 吉武 理恵 氏
於:クレアロンドン事務所 会議室
2015年度第2回目のスピーカーシリーズでは、ジェトロ・ロンドン事務所の島本氏、酒サムライ(日本酒造青年協議会)英国代表の吉武氏をお招きし、英国における日本食、日本酒事情についてご講演いただきました。主な内容を以下のとおりご紹介します。
<ジェトロ・ロンドン事務所 島本氏>
○農林水産物・食品の輸出状況について
・日本から世界への農林水産物輸出額は、2014年に過去最高となる6,000億円を突破。2015年には7,000億円を超える見込み
・このような状況を受け、「TPP対策大綱」においても、これまでの目標「2020年までに輸出額1兆円達成」を前倒しにしようとする動きも出てきている
・世界への輸出地域に占めるEUの割合は約5.4%。うち英国は19.0%を占める(2014年)
・英国への輸出は2013年から2014年にかけて44.1%増加。今後も増加が見込まれる
○英国への輸出状況について
・世界への輸出状況と同様、増加傾向。加工食品が占める割合が大きい
・日本酒の輸出も増加傾向。英国向けの日本酒は単価も上昇傾向。高級層が市場となっている。
・日本食レストランの増加に合わせて日本酒も増加している。現在はまだまだ日本食レストランでの需要が大半(輸入清酒の8割は日本食レストラン需要)
○日本食輸出増の理由
・日本食=健康的というイメージが浸透してきている(ロンドンに住む人を対象とした2011年ジェトロ実施調査より)
・好きな外国料理として「日本食」を挙げる人も増加している(2007年には2%→2012年には8%)
・英国は欧州で最も肥満率が高く(英国成人肥満率24.7%、日本人は3.6% 2014OECD統計より)、健康志向が高まっていることも一因
○追い風となる英国への日本酒輸出事情
・英国では、酒サムライ等、現地での日本酒知名度向上に取り組む団体が既にある
・他の食材と比べ、輸入の際に適用される規制が少ない
・ディストリビューターはこれまでは日系業者がほとんどだったが、現地系のディストリビューターも増えてきている
○その他
・現地の人に受け入れられやすい商品を意識する必要がある
(例:瓶の中に果実が入れられている梅酒等は、受けが悪い傾向にある、等)
・日本酒のデザインは、英国人から見たらどれも同じに見えてしまう。他の銘柄にはないキャラクター、ストーリーを売りにしていく必要があるのでは
・特に、現在は輸出に取り組む酒蔵で飽和状態にあるため、酒を扱いディストリビューターに対してオリジナリティを丁寧に説明する必要がある
【質疑応答】
○欧州の国ごとにおける食品関連規制の傾向について
EU加盟国においては、EUが基準となる規制を定め、各国が上乗せ規制を定めることができる。一般的に南に行くほど規制が厳しく、スペイン等は規制が大変厳しいようである。
○アメリカへの輸出額は英国とは比べ物にならないほど大きいが、その理由は。
アメリカの動きは英国より5~10年ほど先を行っている感がある。また、ニューヨークだけが注目されがちだが、アメリカの西海岸は日本からも近く、多数の日本人が住んでいてジャパンタウンもあるくらいで、英国とは規模そのものも違う。さらに、英国はアメリカと比べると、保守的な部分も持ち合わせている感もある。
<酒サムライ(日本酒造青年協議会)英国代表 吉武氏>
○酒サムライについて
・日本の酒蔵の数は減少傾向、酒を飲む人の数も少なくなってきている中で、日本酒の振興を図るために比較的若い蔵元代表らで立ち上げた組織。現在の会員数は約800人
・吉武氏は英国代表として、英国における日本酒の振興に取り組んでいる
○酒サムライの主な活動
・日本酒のイメージを正しく持ってもらい、魅力を感じてもらうため、様々な機会に参加してのPR活動を実施(現在の主なターゲットは、英国主要機関、経済界、日系機関、大学等)
・各分野で活躍する私人を「酒サムライ」に任命し、PR活動を依頼。
・ロンドンで行われている「International Wine Challenge」というコンペティションの中に、約10年前に日本酒部門を立ち上げ。開始当初は200銘柄程度だったが、2015年には876銘柄が参加。