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調査・研究

スピーカーシリーズ

「子ども・子育て新システム」論議に関するメモ-日・英・瑞比較を通じて-

2011年02月04日 

1 テーマ:「「子ども・子育て新システム」論議に関するメモ-日・英・瑞比較を通じて-」
2 日時:2011年1月25日(火)14:00~15:30
3 講師:新潟県立大学国際地域学部 准教授 高端 正幸様
概要は下記のとおりです。

<子ども・子育てに関する日本の現況>
・日本は総給付額が少ないうえに、現金給付が多い。また、年金や医療給付が大きく、家庭向けの給付が少ない。→少子化の進行が止まらない(出生率:1970年2.13→2008年1.37)が、スウェーデンやフランスのような子育て支援が充実した国は回復している。
・日本における女性の就業率は、他の先進国と比べて実は低くないが、子供が低年齢の場合低くなる(いわゆるM字カーブが出現する)のが特徴である。これは、そもそも就業率の男女差がない北欧では見られない傾向である。
・以前は女性の就業率が高いほど出生率が低かったが、世界的には近年逆の傾向にある。しかし日本は女性の就業率が高いものの、未だに出生率が低い。
・ひとり親家庭では、子供を持つことが貧困をもたらす。原因は、公的な家族・子育て支援向け支出が小さいことにある。一方北欧では現物サービスの割合が大きく、一人親家庭でも貧困率が低い。

<日本における子育て支援施策の主要課題>
・保育サービスの量的不足。
・共働きの一般化など、「男性稼ぎ手モデル」の実質的崩壊に対応できていない制度・政策。
・育児休業取得率の低さ、育児休業取得時に給付される手当の低さ、労働時間の過多、不規則労働の増加

<子ども・子育て新システムに関する議論>
・改革案のポイント:保育を含む子育て支援の諸財源を一本化・包括交付金化し、児童数など需要指標に基づき市町村へ交付。運営費補助等を公私統一する。認可外のサービス主体や多様な保育サービスを給付対象に含める。
・地域集権主義改革との関係:人員配置・面積・施設要件などを、国による「参酌基準」提示とし、具体的な用件は都道府県条例により決定する。現物給付に係る負担金・補助金は原則一括交付金化し、「子ども・子育て包括交付金」とする。

<スウェーデンの分権型システム>
・保育サービスを必要とする全ての家庭に対し提供される。
・保育サービスは市町村事務であり、国が提示した要項に基づき、人員・面積等要件を市町村が独自に設定し、事業者を認可する。
・保育サービス関連の特定補助金は、保育料上限設定に伴う収入補てんのみ。
・サービスの質が確保されており、地域間格差はない。これは地方財源の豊富さ、民主的統制(対有権者)が有効に働いていることによる。
・公立・私立間でサービスの質に差はない。公私ともに同じ基準で認可され、市町村による監督、賃金も公私同水準である。保育セクターの労働者は、公立・私立とも同じ労働組合に所属し、同時に賃金交渉を行う。(日本では私立はパートタイム労働者が多く、賃金も低く抑えられている)

<イギリスの集権的システム>
・所得階層間のサービスへのアクセシビリティに格差がある。保育サービスは子どもの貧困対策としての性格を有しており、母親の就労促進とのリンクしている。
・サービス供給における公的部門の役割が小さい。民間事業者の増加で量的拡大に貢献しているが、多様な需要への対応には課題がある
・財源供給は集権的・分断的・一時的である。補助金は開始から一定期間後にはフェードアウトし、自立を求められる。

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