2005年から、医療制度におけるICチップ付きIDカードの導入が進められてきた。
しかし、技術的な問題や個人情報保護の観点から、全国規模の制度の導入が難航している。
もともと、電子カルテのような制度として計画され、ICチップを含むIDカードには医療データが保存され、許可を得た医療サービスのスタッフだけがそれにアクセスでき、基本データと保険データの確認ができるという構造であった。また、処方箋の発行と薬局による薬の配分も制度に入る予定であった。
健康保険機関はすでに1995年から電子データを含むカードを導入し、被保険者の基本的な個人情報と保険情報が記録されていた。医療機関にかかる時に、保険の状況を確認するために利用されていたが、本人の医療データや治療についての情報は登録されていなかった。
2006年秋から、ドイツの7つの地方において、ICチップを含む保険IDカードの導入が試験的に行われた。カードの試験的な運営には、被保険者6万3千人、11の病院、190人の医者と115の薬局が参加した。このカードには、被保険者の了解で医療データが記録され、処方箋の電子データ発行と薬の配分が可能となっていた。しかしながら、多くの場合、制度の運営には問題が発生し、医者、薬剤師そして患者にとって使いにくいと報告されていた。従って、この制度の全国的な導入には時期尚早との判断になった。もともと2009年末までに全国のICチップを含む保険証明書、電子カルテ、そして電子処方箋制度として利用できるカードの導入が予定されていたが、実現できなかった。
現在では、試験的な運営が続けられているが、2010年に入ってから、電子カルテと電子処方箋制度の導入がまた延期されることとなった。