国際交流
2009年度実施事業 オーランド沖縄交流セミナー
1. 事業の概要
2009年9月1日(火)~2日(水)にフィンランドのオーランド諸島のメリエハムンで、「オーランド沖縄交流セミナー」を開催しました。
このセミナーではオーランドと沖縄における地方自治の強化、国と地域との関係改善をメインテーマとして、両地域における「経済状況」、「文化と平和」及び「地方自治制度」について、オーランド島と沖縄双方の自治体関係者が集い講演及び意見交換を行ったものです。このセミナーを通じて、両地域における国と地方の権限のあり方等についての相互理解を深めました。
2. 主催
オーランド平和研究所、自治体国際化協会ロンドン事務所
3. 主な参加者
Ms. Elisabeth Naucler (フィンランド国会議員(オーランド代表) 、Dr. Richard Palmer(オーランド統計研究センター)、Mr. Lars Ingmar Johansson(元オーランド議会官房長官)、池上雅子氏 (ストックホルム大学教授)、安田国彦氏 (在フィンランド日本大使館広報文化班一等書記官)、上原勝則氏 (沖縄県観光商工部産業雇用統括監)、島袋 純氏 (琉球大学教授)、大西富士夫氏(静岡県立大学広域ヨーロッパ研究センター)
4. セミナーセッション内容
■セッション1 経済状況について
(1)テーマ1A:General Outline of Okinawa Prefecture
上原勝則氏 (沖縄県観光商工部産業雇用統括監)
(沖縄県の概況)
・沖縄県の位置、人口、歴史(米軍占拠、沖縄促進開発計画)
・沖縄県の産業(観光、国際コンベンションセンター、IT集積センター、科学技術大学院大学)
(2)テーマ1B:Economic Situation in Aland
Dr. Richard Palmer(オーランド統計研究センター)
(オーランド経済指標)
・オーランドの人口動態
①1870年代からフィンランド本土の人口が増加
②オーランドでも安定的に増加しているが本土及び外国からの流入によるものが多い。
・オーランドの雇用形態
①男性は船舶輸送産業及び建設業従事者が多い。
②助成は公共サービス部門(病院、社会保障サービス)従事者が多い。
・オーランド政府の財源
オーランドの人口はフィンランド人口の0.52%であるが、原則として再配分される中央政府からの税収は0.45%である。ただし、中央政府が管理するオーランドにおける税収が0.50%を超える場合は、その分を自主財源とすることができる。
■セッション2 文化と平和について
(1)テーマ2A:Issues of Culture and Peace on Okinawa
池上雅子氏 (ストックホルム大学教授)
(沖縄の平和問題)
・東アジア地域問題(朝鮮半島、台湾、新兵器開発)
・沖縄県の地理(上記問題の渦中に沖縄は位置する)
・米軍基地の存在と負担
①沖縄全土の11%が米軍基地;26,000人の軍事関係者在籍)
②米軍基地グアム移転(4000億円を日本政府が負担)
③沖縄県の米軍基地周辺の経済への依存度は低く、中央政府からの基地賃借料に依存している。
④米軍基地が県外移転した場合の経済政策が課題となる。
・オーランドモデルと沖縄県
オーランドの非武装中立を掲げた自治政府モデルを取り入れ、沖縄周辺地域との関係を深め、地方自治を強めることで、その地域の平和に貢献することができる。
(2)テーマ2B:Issues of Culture and Peace on Aland
Dr. Sia Spiliopoulou Akermark(オーランド平和研究所所長)
(オーランドの平和問題)
・1921年に国際連盟によりオーランドは中立・非武装地域となる。
・1947年にはパリ講和条約でより多くの国より中立・非武装の地位を認められる。
・今後は、「中立・非武装」と北欧・EUの安全保障との兼ね合いが問題となる。(オーランド近郊海域での薬物などの非合法取引の取締りなど)
■セッション3 地方自治制度について
(1)テーマ3A:Political/legal system Okinawa
島袋 純氏(琉球大学教授)
(沖縄の地方自治)
・西欧諸国での地方分権は、①中央政府機能の移転、②少数民族の政治参加、③地域連合(EU)の存在が大きな柱となっている。
・日本では地方に権限が移譲しているが、①中央政府の一部の機能の移転、②少数民族の政治参加が少ない、③EUのような国際連携組織がない。
・この日本型地方分権の例外が沖縄と北海道である。①沖縄開発庁の存在、②琉球民のアイデンティティ、③琉球王国時代からの台湾・韓国などの近隣諸国とのつながりが沖縄県にはある。
(2)テーマ3B:Political/legal system Aland
Mr. Lars Ingmar Johansson(元オーランド議会官房長官)
(オーランドの地方自治)
・オーランドの地方自治の歴史
①1854-56年 オーランドの非武装に係る国際会議
②1921年 オーランド自治法成立(国際連盟)
③1951、1991年 オーランド自治法改正
・オーランド自治法
改正にはフィンランド国会とオーランド議会での議決が必要。自治法についてはフィンランド憲法に規定されている。
・オーランド議会
教育、保健、環境、地方自治体、郵便事業、ラジオ・テレビ、交通に係る法制を担う。
(外交、刑法、司法制度、関税、税制は中央政府が管轄)
※EU加盟については中央政府の事項ではあるが、オーランド政府の存在について議論中である。
・オーランド住民権
①両親が住民権を所有している18歳未満のフィンランド国籍の子弟
②1993年1月1日に住民権を獲得した者
(獲得条件)
①オーランドに居住していること、②フィンランド国籍を所有していること、③5年間オーランド
に居住していること、④スウェーデン語がある程度話せること
■パネルディスカッション
(司会) 大西富士夫氏(静岡県立大学広域ヨーロッパ研究センター)
(パネラー)
沖縄県側 池上雅子氏、島袋 純氏
オーランド側 Ms. Elisabeth Naucler 、Dr. Sia Spiliopoulou Akermark
すべてのセッションに関係した議題について意見交換を行った。
・沖縄県の米軍基地移転後の沖縄県の問題(中央政府からの土地賃借料に代わる財源)
・オーランド近郊水域での安全保障問題
・オーランド及び沖縄県における住民のアイデンティティの保護
オーランド自治政府庁舎