国際交流
2010年度実施事業 メドウェイセミナー
英国の地方自治関係者及び在英の日系機関関係者を対象とするセミナーを開催し、英国での日本に関する理解を深めていただくとともに、日英の交流・協力関係の促進に資することを目的に毎年開催しています。
1.事業の概要
平成23年3月4日(金)、イングランド南東部のメドウェイ市旧穀物取引所において、「日英交流セミナー兼第3回日英ローカルリンク会議」を開催しました。 この会議は、日英間の自治体交流の現状について情報を共有し、現在抱えている課題をどのように解決するかを話し合うことを目的として、2009年、2010年の2ヵ年にわたって、在英日本国大使館と共催してきた「日英ローカルリンク会議」と、ロンドン事務所が毎年開催している「日英交流セミナー」を同時に開催したものです。
■テーマ「Creating Value Through Local Partnerships」
■開催日 2011年3月4日(金)
■開催場所 The Corn Exchange(メドウェイ市)
2.実施内容
■挨拶 在英日本国大使館 田村政美参事官
日英ローカルリンク会議は、日英間の自治体の友好提携のこれまでと現状を分析し、将来の展望を切り開くことを目的に2009年から毎年開催してきたもので、今年で3回目を迎え、今回で最後とする。
英国と同様日本の自治体も財政難にあえいでおり、国際交流についてのコストは真っ先に削られがちではあるが、国際交流、国際協調の重要性はますます高まっている。都市間競争が激化する中、英国と日本の自治体が、友好親善に留まらず、共通した課題の解決策をさぐる、あるいは両者の個性を生かした経済協力も視野に入れて、都市間競争に勝ち残るための新しい政策のヒントが得られればと期待している。
■挨拶 Cllr. Susan Haydock (Councillor, Medway Council)(司会)
第3回目となる日英ローカルリンク会議として日英セミナーがメドウェイ市で開催されるのは大変名誉なことである。
メドウェイ市は、徳川家康の外交顧問であった三浦按針ことウィリアム・アダムスの出身地であることから、神奈川県横須賀市、静岡県伊東市と姉妹都市提携を結び、これまで約年にわたって活発な交流を続けてきた。
メドウェイにとって日本との絆は街を特徴づける非常に重要な要素の一つとなっている。姉妹都市である2都市との交流を深めることはもちろん、市内の大学と日本のアートスクールとの提携や、高校同志の姉妹校提携など、日本との絆は確実に深まっている。本日の会議が
■講演1 Prof. Marie Conte-Helm (Director General, Daiwa-Anglo Foundation)
「People and Place: Japan and the North East of England」
19世紀末、世界に先駆けて近代工業化を実現した北東イングランドには、当時の世界最先端の工業技術が集まっていた。草創期の日本海軍の軍艦を建造したのはタインサイドの造船所である。開国後間もない日本は、造船業や工業技術の習得のため、この地域に多くの留学生を派遣した。
こうして始まった北東イングランドと日本との経済関係は、1960年代に日本精工がピーターリーに、80年代に日産とコマツがそれぞれサンダーランドとゲーツヘッドに工場を設けるなど、途切れることなく今日まで続いている。
その後も、ティーサイド大学と中央大学、大阪大学との仮想現実技術の実用化を巡る学術交流が行われたり、日立製作所がニュートン・エイクリフに新たな車両工場の建設を決めるなど、新たな技術や知識移転を通じての日英関係はますます深まっている。
■講演2 (財)自治体国際化協会事務局長 池田憲治
「Japanese Sister City Relationships – Current Activities and Future Challenges」
日本での姉妹都市交流は、戦後、平和の構築を目指して始まった草の根の国際交流に起源を持つが、近年は、これまでの文化交流から、提携関係にある自治体相互にとってより具体的な利益を生む経済交流に重点を移している。本発表では、日本の自治体の姉妹交流の数的推移と、交換留学生の相互派遣、文化・スポーツ交流など、これまでの交流事例の紹介からはじまり、近年盛んとなっていた経済交流の具体的事例や成功事案の紹介ならびに姉妹都市交流に対するクレアの支援について発表を行った。
■講演3 Mr. Ashley Davis (Town Centre Management and Visitor Information Centre Manager, Medway Council)
「Medway’s International Exchange with Ito and Yokosuka」
メドウェイ市ジリンガム地区は、徳川家康の外交顧問であった三浦按針ことウィリアム・アダムスの出身地であることから、神奈川県横須賀市、静岡県伊東市と姉妹都市提携を結び交流を深めてきた。同地区にはアダムスの洗礼記録と洗礼を受けた洗礼盤が残る教会があり、そこには今、アダムスの生涯を紹介するコーナーが設けられている。
両市との交流の中心は、毎年行っている中学生の相互派遣である。いちばん基礎的な交流手段であるが、未来のある子供たちに国際経験を与えることは、将来に大きな意味を持つ投資と考えている。長く続けていることで、市民の間に日本に対する親近感が醸成されている。 メドウェイ市と両市は、2012年に提携30周年を迎える予定である。
■講演4 Prof. Peter Smart (Senior Lecturer, Aberdeen Business School, Robert Gordon University)
「In the footsteps of Thomas Blake Glover: The Aberdeen-Nagasaki Citizens’ Friendship Agreement」
2010年7月、アバディーン市と長崎市は新たに市民友好提携を結んだ。そのきっかけとなったのが、「Scottish Samurai」として知られる幕末の日本で活躍した商人トーマス・グラバーである。三菱財閥やキリンビールの創業者の一人であるトーマス・ブレイク・グラバーはアバディーンで生まれ、開港間もない日本に渡り、長崎に「グラバー商会」を設立し、貿易業や当時の先端技術の紹介を通じて日本の近代化に大きく貢献した。長崎市との交流はこの歴史的な縁によるもの。
アバディーン市のBridge of Don Aberdeen Rotary Clubが長く親交のあった長崎市のロータリークラブに対し、「グロバー奨学生」として隔年で学生を派遣したいという申し出を行ったことをきっかけに、交流を続け、今回の締結に至った。 これからも、アバディーン市でのグラバーイベントや長崎市でのスコットランドフェスティバルの開催などを通じて、交流を深めていきたい。
■講演5 Ms. Joanna Lavan (Manager, International Trade & Relations, Creative Sheffield)
「New Aspects of International Exchange」
クリエイティブ・シェフィールドCreative Sheffieldは、イングランド第4位の都市であるシェフィールドの経済開発を目的として設立された、シェフィールド市が出資する開発公社である。シェフィールドに対する投資促進・企業誘致のほか、成長産業への投資推進、産業基盤の再整備など、シェフィールドの経済再生に向けて幅広い活動を行っている。なかでも現在重視しているのが国際戦略である。Trade、Talent、Tourismの3つのTを柱に、域内への海外投資の誘致のほか、域内企業の海外進出への支援などを進めている。
国際的なコネクションは地域の人々を異なる言語と文化を理解する動機づけとして重要である。シェフィールドでは、都市間の友好提携を経済振興に生かす戦略を進めている。その一環として、経済成長著しい中国の成都市と、2010年3月に友好提携を締結、同年10月に訪問団を派遣し、現地事務所の設置やシェフィールド市内の企業の現地進出が決定した。
シェフィールドは、日本では神奈川県川崎市、北海道札幌市との間に姉妹都市提携を結んでいる。2010年11月、川崎市との提携20周年を記念し、川崎市長と市議会議長がシェフィールドを訪問、学術交流や産業振興を進めることを目的とした交流協定書に署名した。これを契機に2011年2月に環境関係の見本市に出展したほか、来年は川崎市で開催されるエコフェアに出展する予定である。