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CLAIRメールマガジン vol.201(2018年3月9日)=街を住民に取り戻す!?オランダ・アムステルダムの観光施策の行方

2018年03月09日 

【自由記事】街を住民に取り戻す!?オランダ・アムステルダムの観光施策の行方
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日本各地でインバウンド施策に力が注がれる中、世界の人気観光地の中には、
受け入れ過剰に陥り、観光施策の見直しへと舵を切り始めた都市もあります。
その中の一つ、オランダの首都アムステルダムでは、市の人口が約83万人(2016年)
であるのに対し、近年その約20倍にあたる規模の観光客が押し寄せ、住民たち
は観光客に自分たちの街を侵食されていると感じているといいます。インバウ
ンド増加の要因は、市を挙げた観光プロモーションが功を奏したことに加え、
格安航空や民泊により観光客の経済的負担が軽減されたことが後押ししたもの
と分析されています。市の中心部には観光客向けのレストランや店ばかりが立
ち並び、酔っ払った観光客によるマナー違反の急増、また、民泊普及で空き家
が減り、家賃高騰により転居を余儀なくされているケースもあるようです。
同市の関連施策を見ると、観光地としての収益性と住民の生活の質のバランス
を模索している姿が浮かび上がります。近年、一部の人気地区や施設に集中し
ている観光客を郊外へ分散する取り組み等を進めつつ、観光税の値上げ(2018年)
や新規ホテル建設の抑制等の措置が取られています。

このような動きを象徴するトピックとして、先日あるチーズ店が起こした訴訟
の判決がありました。市中心部の歴史地区での観光客をターゲットとした店の
新規開店を抑制する市の新たな方針に対し、観光客向けと判断され市から閉店
を命じられたチーズ店が提訴したものです。なぜ、住民も利用すると思われる
チーズ店が観光客向けと判断されたのでしょうか。注目されたのが、店の使用
言語でした。同店では、広告の文字も接客にも公用語のオランダ語ではなく、
英語のみが使われていたため、観光客向けの店と判断されたというのです。店
側は同市の判断基準が曖昧だと主張しましたが、裁判では市側の言い分が認め
られ、チーズ店が敗訴しました。このように一見、営業の自由に対する過度の
規制と思われる厳しいインバウンド抑制施策が訴訟でも認められるほど、同市
での重要な政策課題となっているようです。

日本でもすでに一部の観光地で「観光公害」と呼ばれる現象があるようですが、
2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、国を挙げて訪日
プロモーションを進めている中、政策立案にあたっては住民の生活の質にも配
慮することが求められると考えます。

(参考)
・ http://www.telegraph.co.uk/news/2017/10/05/amsterdam-bans-new-tourist-shopsto-combatdisneyfication-city/
・ https://nltimes.nl/2018/01/23/amsterdam-allowed-close-cheese-store-tourist-shop-ban-court
・ https://www.theguardian.com/world/2018/jan/26/dutch-cheese-heads-told-to-close-amsterdam-shop

(ロンドン事務所所長補佐 牧田)

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