【記事】ドイツでの公共工事におけるVR技術の活用
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ドイツのバーデン・ヴェルデンベルグ州のStuttgart駅とUlm駅の間の鉄道路線
を新設するため、Stuttgart駅をこれまでの終着駅の頭端式から通過式に改修
するプロジェクト「Stuttgart21」が進められています。この路線が開通すれ
ば、西はフランス、東はオーストリアやスロバキア、ハンガリーの都市と鉄道
で結ばれることになります。
駅の改修工事は、2010年に始まりましたが、巨額な費用がかかること、工事で
公園の樹木が損なわれること、歴史的な駅舎の一部が取り壊されることなどを
問題視する反対運動が起こり、住民デモが先鋭化して警察と衝突、負傷者も出
たそうです。その後、州議会議員選挙でプロジェクトに反対する緑の党が躍進
したことをきっかけに、工事が始まっているにもかかわらず、プロジェクト取
りやめの法案に対する賛否を問う州民投票が実施されました。結果は約60%が
反対で、工事はそのまま進められることになりました。
しかしながら、こうした反対派の動きを背景に、情報公開の重要性を認識した
ドイツ鉄道は、駅舎の一部を改修して「TURNFORUM」を設置、新しい鉄道網の
メリットの説明や新しい駅舎の完成予想、駅周辺の都市計画などを映像や模型
などで説明しています。また、駅改修工事現場のガイドツアーも開催されてい
ます。ここで活躍するのがVR。専用のメガネを装着するとそこは駅舎の地下。
進められる工事の様子を360度、地上にいながら体験できます。映像の作成に
は、工事現場に多数の専用カメラを設置して行ったとのことです。実際に工事
現場のガイドツアーも開催していますが、安全性確保のため、一回に限られた
人数しか案内できません。「VRは安全に実際の工事の様子を見てもらうことが
でき、より多くの人に工事に対する理解を深めてもらうのが狙いです。」と、
担当者は話していました。
映像の最後に、岩盤発破の様子を見ることができましたが、飛んでくる岩を思
わず避けようとしてしまうくらい圧巻の映像です。
(ロンドン事務所次長 浅田)
参考サイト
http://www.bahnprojekt-stuttgart-ulm.de/en/turmforum/overview/