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CLAIRメールマガジン vol.348(2024年8月9日)=教員不足は世界的な課題。英国での教員不足対策は?

2024年08月09日 

 日本では、文部科学省が2021年度に実施した「「教師不足」に関する実態調査(※1)」を皮切りに、教員不足が深刻な問題として広く認識されるようになりました。しかしながら、2023年5月に開催されたG7教育大臣会合でも教員不足が話題に上がるなど、実は世界各国でも課題となっています(※2)。英国も例外ではなく、政府から資金提供を受けているイングランド内の学校(state-funded schools)での欠員は、2020年11月の1,100人から2023年11月には2,800人と、2倍以上に増加しました(※3)。
 それでは、英国ではどのようにこの課題に取り組んでいるのでしょうか?英国の関係資料に目を通すと、「採用と定着(Recruitment and Retention)」というフレーズに何度も出会います。2019年に策定された「教員採用と定着戦略(Teacher Recruitment and Retention Strategy)(※4)」の主要な取り組みの柱の一つに、「ライフスタイルや人生の願望の変化に関わらず魅力的な職業として確立すること」が挙げられており、家族と過ごすことと仕事の両立を求めるといった労働者の需要の変化により、パートタイムなどの柔軟な働き方を提供することが、より多くの人を教職に惹きつけることに繋がるとしています。柔軟な働き方を促進するためのガイダンス(※5)では、パートタイム、ジョブシェア(1人の勤務時間を分割し、2人以上で同じ業務を実施)、段階的退職(段階的に勤務時間や責任を減少)などについて触れられており、ワークライフバランスの改善や経験豊富なスタッフの確保などに繋がったという学校からの報告結果にも言及しています。
 英国と日本とでは、教員配置のスキームは大きく異なりますので、こうした取り組みをそのまま日本で全面的に導入することは難しいとは思いますが、労働者の需要の変化を踏まえながら、多様な働き方に対応できる仕組みを構築することは、より多くの人に教員として働き続けてもらい、又、教員として働きたい人材を新たに掘り起こすことに繋がるかもしれません。
 最後に、今般、英国では新政権体制で6,500人の教員を雇用する方針(※6)が打ち出されました。教員不足の課題がある中で、今後どのように教員確保を達成していくのか、政府の動向も踏まえながら、英国の対応について更に深掘りしていきたいと思います。

ロンドン事務所 所長補佐 今川

<参考文献・引用文献>
※1 「教師不足」に関する実態調査 (検索日:令和6年7月9日)
https://www.mext.go.jp/content/20220128-mxt_kyoikujinzai01-000020293-1.pdf
※2 G7富山・金沢教育大臣会合2日目 (検索日:令和6年7月9日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2023/20230513.html
※3 School workforce in England (検索日:令和6年7月9日)
School workforce in England, Reporting year 2023 – Explore education statistics – GOV.UK (explore-education-statistics.service.gov.uk)
※4 Teacher Recruitment and Retention Strategy (検索日:令和6年7月9日)
https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5c8fc653ed915d07a80a33fa/DFE_Teacher_Retention_Strategy_Report.pdf
https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5c77fdf240f0b603db40a8c9/6.5092_DFE_Teacher_Retention_Strategy_1Pager_v10ii.pdf
※5 Guidance「Flexible working in schools」 (検索日:令和6年7月9日)
https://www.gov.uk/government/publications/flexible-working-in-schools/flexible-working-in-schools━2#benefits-of-flexible-working
※6 Education Secretary begins push to recruit 6,500 new teachers (検索日:令和6年7月9日)
https://www.gov.uk/government/news/education-secretary-begins-push-to-recruit-6500-new-teachers
・Case study Implementing job shares successfully (検索日:令和6年7月9日)
https://www.gov.uk/government/case-studies/implementing-job-shares-successfully
・Flexible working (検索日:令和6年7月9日)
https://neu.org.uk/advice/your-rights-work/contracts/flexible-working

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