Japan Local Government Centre (JLGC) : London > 調査・研究 > クレア本部メールマガジン > CLAIRメールマガジン vol.346(2024年7月12日)=ロンドンの公共交通機関では当たり前?「オープンループ」とは

調査・研究

クレア本部メールマガジン

英国

CLAIRメールマガジン vol.346(2024年7月12日)=ロンドンの公共交通機関では当たり前?「オープンループ」とは

2024年07月12日 

 筆者は普段、地下鉄を利用して通勤していますが、切符を買うことも交通系ICカードをチャージして利用することもありません。通常のショッピングのように、携帯電話のモバイルウォレットに所有するカードを改札のリーダーにかざすのみです。筆者に限らず、ロンドンの地下鉄やバスを利用する人々の多くがコンタクトレス対応のクレジットカードもしくはデビットカードを利用しており、2022年10月のロンドン交通局(Transport for London)の統計によれば、全体の約71%がコンタクトレス決済を利用しています。また、店舗でのコンタクトレス決済による£100以下の決済件数の割合が、2023年に過去最大の93.4%に達するなど、ロンドンでは公共交通機関以外でもキャッシュレス化が進んでいます。
 このように、コンタクトレス対応のカードで公共交通機関を利用できるシステムは「オープンループ」と呼ばれています。現在では、ロンドンのみならずシンガポールやニューヨークでも導入されていますが、ロンドンの地下鉄やバス、トラムなどを運営するロンドン交通局が世界の主要都市で初めてオープンループを採用したといわれています。ロンドン交通局におけるオープンループの導入は、2012年のロンドンオリンピックが契機となりました。同年にバスで導入されたのち、2年後の2014年には地下鉄を含む他の公共交通機関に対象を広げ、正式に運用されるようになりました。
 日本においては、2023年11月時点で88の鉄道会社がオープンループの導入を決定しています。そのほか、西日本では2025年の大阪・関西万博に備え、近畿日本鉄道など主要鉄道会社3社が2024年内に、全駅にコンタクトレス決済のカードリーダーを設置することを発表しています。
 一方で、オープンループの導入にはデメリットがないように思われますが、コンタクトレス対応のカードリーダーは、交通系ICカード用のカードリーダーと比較して約1.5倍の時間を処理に要します。筆者の経験からも、日本の改札では立ち止まることなくスムーズに通過できますが、ロンドンの改札では数秒立ち止まる必要があるように感じます。このような理由から、今後日本では現在利用されている紙の切符や交通系ICカードはそのままに、オープンループはあくまでサービスの選択肢のひとつとして普及するだろうといわれています。
 海外からの旅行者にとっても、日本に住む人々にとっても、より便利に公共交通機関が利用できる未来を期待しています。

ロンドン事務所 所長補佐 佐々木

<参考文献・引用文献>
・ロンドン交通局HP
https://tfl.gov.uk/info-for/media/press-releases/2022/october/new-analysis-shows-that-pay-as-you-go-with-mobile-on-the-tube-now-more-popular-than-before-the-pandemic
・2023年のコンタクトレス決済件数の割合が最大に
https://www.credit-connect.co.uk/news/record-number-of-contactless-payments-in-2023/
・ロンドン・シンガポール・ニューヨークにおけるタッチ決済の導入
https://www.smbctb.co.jp/gp100/article011/
・オープンループとアーバンモビリティについて
https://www.visa.com.hk/content/dam/VCOM/regional/na/us/sites/documents/veei-reimagining-ridership.pdf
・オープンループについて
https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/suzukij/1430443.html
・西日本における主要鉄道会社でのクレカ決済導入
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF0238E0S3A101C2000000/

ページの先頭へ