ロンドンのとあるパブで、背後から「今日は最高だったよね!どうだった?」という声が聞こえてきました。さらに繰り返し、「ねえ、どうだった?」と聞いてきます。どうやら、私に話しかけていたようです。
問われていたのは、8月29日まで3日間開催された、ノッティングヒルカーニバルの感想についてです。ロンドンのパブにいると、知らない人から話しかけられることは日常茶飯事です。アメリカのシカゴ出身で、1年半前にノッティングヒルに移住した彼女は、ブラジル出身の女性パートナーとともにカーニバルを見に来ていたようです。興奮冷めやらぬ様子の2人。それもそのはず、今回の開催は、コロナ禍を挟んで3年ぶりの開催でした。
ノッティングヒルカーニバルは、1966年に初めて開催された、ロンドンにおけるカリブ文化の豊かな歴史を祝うイベントです。その起源は、当時、大規模な暴動が起こるなど、社会問題となっていた移民差別の解消を図るための解決策としてのお祭りとして始められました。最初のカーニバルは約500人で開催されましたが、その後、ヨーロッパ最大のストリートフェスティバルに成長し、現在では、約5万人のパフォーマーや100万人を超える見物客を誇る、ブラジルのリオに次ぐ世界第2位の規模のカーニバルになっています。
3日間に及ぶカーニバルは、初日には英国最大のスチールパン演奏(金属の器のような楽器を用いた演奏)、二日目には子供たちによるパレード、最終日にはメインイベントである大人によるパレードという、バラエティ豊かな内容で開催されました。イベント期間中は、ダンスはもちろん、パフォーマーの美しい衣装、300軒以上並ぶ屋台での食事、日本では感じたことのない全身が揺さぶられるほどの大音量の音楽など、まさに全身でカリブ文化を感じることができました。
移民差別の解消を目指して始まったイベントは、今では差別を乗り越えて人々が一体となるイベントに発展しています。見物客も、パフォーマーと一緒に歌って踊ったり、楽器を持ち寄って演奏に参加したりしてみんなで楽しむ様子であふれており、まち全体が人種・国籍を超えてひとつになったような雰囲気を感じました。
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(https://www.jlgc.org.uk/jp/ad_report/nottinghillcarnival/)
ロンドン事務所 所長補佐 畑