エドリントンの児童虐待被害者の保護に失敗したドンカスター市はその責を果たせていないとして、政府は市のすべての執行権限を取り上げるという前例のない対応を「積極的に検討している」とタイムズ紙が報じた。
監査委員会(the Audit Commission)の報告書によって、ドンカスター市の直接公選市長およびあまりにも多くの幹部議員や職員が適切な行政執行能力を欠いていたということが明らかになったことを受けて、コミュニティ・地方自治大臣ジョン・デナム氏は、昨日、ドンカスター市の失政に対処するための即時行動を確約した。
*「rotton borough」の元々の意味は「腐敗選挙区」で、有権者の激減により資格を失いながら代議士を出していた選挙区を指していた(出典:リーダーズプラス) 。ここでは、激しい政争のために児童福祉部門を始めとする行政機能が麻痺したドンカスター市を比喩したもの。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について 20.4.2010
カテゴリー別アーカイブ: 調査・研究
LGAがドンカスター市支援を試みる一方、政府による介入も同様に進行
2010年04月20日監査委員会(the Audit Commission)による、ドンカスター市は行政運営に失敗した自治体(failing council)であるとの極めて批判的な調査報告書の発表後、LGAは、市の管理運営問題に取り組ませるため、2人の上級幹部職員、ジョー・ミラー(副事務総長)とロブ・ホワイトマン(IDeAの歳入マネジメント部長)をドンカスター市職員として派遣した。
しかしながら、ジョン・デナム コミュニティ・地方自治大臣は、政府も同様に国家公務員を派遣していくつかの権限を市から取り上げることになるだろうと断言している。
政府は耳を傾けない
2010年03月30日政府は、公的機関運営委員会からの公的機関の運営に関する提案、国と地方自治体間に公式な協議機関を導入する件に対し否認の意を表明している。政府は、現在の協議形態(例えば、審査活動、審理手続き及び非公式な協議など)で充分であるとしている。
− 「政府は、政府が国会への政策提案を策定する決定的な段階において、地方自治体と政策上の協議を行うための機関を設置することが、国と州議会及び地方自治体の双方にとって有意義であるとは認識していないように思われます。政府は、公式な協議会を設置しなくても、政府の必要に応じて行われる非公式な協議会が例外なくあると反論しているのです。」このようにSKL(スウェーデン地方自治体及び州議会連合。英語ではSALAR)のアンデシュ・クナーペ理事長は述べている。
− 「しかし、政策決定に至る一連の作業に早い段階から地方や地域の階層を参画させることは、提出する提案事項の質を向上させることになるはずです。」と、SKLのアンデシュ・クナーペ理事長は主張している。
【出典】スウェーデン地方自治体協議会(Swedish Association of Local Authorities and Regions: SALAR)のニューズレター(2010年3月30日発行)http://skl.se/web/Regeringen_vill_inte_lyssna_pa_kommunsektron.aspx
ストックホルム市の公共交通
2010年03月15日〔概要〕
市内の公共交通施策を担当するストックホルム市交通局は、環境に配慮した公共交通体系を実現するとともに、徒歩、自転車、公共交通の利用を高めることを目指し、様々な対策を行っている。
毎日70万人以上がストックホルム市交通局の交通機関を利用しており、朝のラッシュアワーには、市内中心部への移動者の78%が公共交通を利用している。
〔具体的な取組〕
・ストックホルム市交通局が運行している交通機関の約75%、地下鉄等に限定すると100%が再生可能エネルギーを利用している。
・世界最多である400台のエタノールバスを所有しており、またバイオガスバスも約100台所有している。
・温室効果ガスの排出を削減する新しい技術を継続的に導入。2003年から2005年には燃料電池バスを、2009年には電気とエタノールのハイブリッドバスを導入した。
・バイオガスバスへの投資を拡大することにより、2011年までに非化石燃料をエネルギー源とするバスが50%を占める見込みである。
・2025年までに、全公共交通機関のエネルギー源を非化石燃料とすることを最終的な目標としている。
・公共交通を利用するストックホルム市民の数を増加させるため、環境に関する情報の提供、サービスの頻度を高めるなど、積極的に取組んでいる。
・公共交通を利用した出張を増やすよう、地域の企業に働きかける試みも行っている。
【出典】
ストックホルム市のwebsite
http://international.stockholm.se/Stockholm-by-theme/A-sustainable-city/
デンマークにおけるインターナショナルスクール増設案
2010年03月08日デンマークでは、海外から赴任する高度な技術を持つ者の子供が通うインターナショナルスクールが不足している。このことを受けてインターナショナルスクールの増設を盛り込んだ政府案が提出された。
高度な技術を持つ外国人がデンマークで将来働くことを考える場合、彼らの子供の教育が確保されることが重要である。そのため、現在デンマークでは歴史や数学など様々な分野において英語で授業が受けられるようになっている。
外国人労働者のためにインターナショナルスクールを増設するため、1月29日にBertel Haarder教育相はデンマーク国内におけるインターナショナル支援校の創設を提案した。
この案が可決された場合、デンマーク語以外の言語で授業が可能な私立学校が国内に分校を設立できるようになる。また国際的な試験を実施しておりデンマークへの進出を考えている中等教育課程にある私立学校も同様に分校を設置できるようになる。
Bertel Haarder教育相は次のように述べた。「すばらしい能力を持つ者を我が国へさらに引き入れる必要がある。将来において社会全体で創造力を強化し、知識を深めるためには、国際競争力は不可欠なものである。インターナショナルスクールを増設することにより、高度技術を持つ外国人労働者がデンマークで働くことを考える重要なきっかけとなる。」
【出典】デンマーク教育省ホームページ
http://www.eng.uvm.dk/Aktuelt/News/Eng/2010/Feb/100201%20More%20international%20schools%20to%20pave%20way%20for%20highly%20educated%20foreign%20labour.aspx
地方自治体に係る政策発表:都市問題対策基金の創設を発表
2010年03月02日2010年3月2日、サディク・カーン交通担当大臣が「都市問題対策基金(Urban Challenge Fund)」の創設を発表した。この基金は広い範囲の交通改善対策のパッケージに対して支援を行うものである。
基金から支援を受けられるのは都市に限定されており、様々な交通手段の選択肢の拡大、渋滞対策、安全性改善、二酸化炭素排出量削減、徒歩・自転車の活用促進と大気環境改善による健康増進等に関する計画に対して基金から補助金が拠出される。この「都市問題対策基金」は、通行料・通行税による歳入を交通インフラ整備のための補助金に充てる予定であった「交通改革基金(Transport Innovation Fund)」に代わるものである。通行料・通行税に関しては、エディンバラ及びマンチェスターでの提案に対して多くの反対意見があったため、導入が非常に困難であることが明らかとなっていた。このため政府は交通対策資金の配分ができなかったため、今回の新たな交通関連基金に切り替えたものである。
*参照 http://nds.coi.gov.uk/Content/detail.aspx?NewsAreaId=2&ReleaseID=411725&SubjectId=2
移民を発展への潜在的可能性と見なそう
2010年03月02日(前略)
他国への移民を容易に、かつ、安全で人間的価値のある環境下で移民が行なえるようにすることは、全世界各国、つまり、富裕な国と貧しい国の双方にとっての責務である。SKL、スウェーデン地方自治体および州議会連合は、各国の参考となる移民の好事例を普及させ、経験を交換するための活動舞台を創り出す重要な役割を担っている。先週、SKLは、シンクタンク”グローバルな挑戦(Tankesmedjan “Global Utmaning” )”と共に、移民はすべての人々にとって有益な潜在的発展性であると見なした議論のスタートとなることを念願に、多くの参加者を迎えてコンファレンスを開催した。
注:Tankesmedjan “Global Utmaning” : 経済、環境、移民、政治問題の進展に関わる独立法人。
http://www.globalutmaning.se/default.aspx 参照。英文ページ有り。
(中略)
しかし、公的部門だけで、問題のすべてを解決することはできない。SKL関係機関自体も新しい移民者が職業や教育機会を可能な限り早急に得られるよう産業界との協調関係を改善する必要がある。私達は、SKLのコンファレンス、“移民社会における将来の自治体”が、移民問題が有する潜在的発展の可能性を実現させる活動のため、社会のあらゆる関係者と階層間で、継続的に互いの経験を交換し合える出発点になることを期待している。我々は、手を拱いて待っていてはいけない。
SKL副理事長 カローラ・グンナルソン、
“グローバルな挑戦”理事長 ヤン・オロフ・カールソン、
2010-02-25日、SKL新聞 “Dagens Samhälle”に発表された記事より抜粋
【出典】スウェーデンの地方自治体協議会(Swedish Association of Local Authorities and Regions:SALAR)のニューズレター(2010年3月2日発行分)
銀行税の導入を検討
2010年03月01日オーストリア連邦政府は近く銀行税を導入することを検討している。これは、2010年2月22日に行われた連邦財務相を議長とする銀行首脳会議(サミット)の結果を受けたものである。同サミットには、金融担当相のほかオーストリアの大手銀行頭取たちが参加し、オーストリア国立銀行が提示した調査結果に基づき議論が行われた。
検討中の銀行税について、まだ詳細は決まっていないが、導入は2011年以降になる見込みである。連邦財務相は同銀行税による歳入は約5億ユーロになるとの試算を発表した。また税率については、連結財務諸表上の額から様々な控除を差し引いた後の課税標準に対し、0.07%から0.1%が適用される見込みである。連邦財務相は、銀行に対するこのような一体課税は十分正当化されると強調している。
連邦財務相及び金融担当相双方ともに、同銀行税が顧客手数料に上乗せされることにはならないと述べている。顧客手数料への上乗せを防ぐため、銀行手数料は厳格に調査されることとなる。加えて、銀行間の競争が銀行にかかる負担の問題を解決するだろうと連邦財務相は説明している。財務相を議長とする新たな検討部会の初会合が2010年3月8日に開催されることとなっており、政府の閣僚及び各銀行の代表者から構成される同部会において政府に対する専門家の意見、答申が取りまとめられる予定である。
2010年2月24日国会の一般討論において、金融担当相は、銀行も含めた社会における全ての法人・団体が公平に国家歳入に貢献しなければならない必要性を繰り返した。同相によれば、デリバティブ、オフ・バランスシート取引等の投機的金融派生商品が銀行税の課税対象となる見込みである。加えて、同税の導入はローン契約にかかる手数料の廃止と同時に実施することを金融担当相は強く求めている。この同時実施により、民間企業等への財政負担を軽減できると見られており、毎年1億5千万ユーロもの歳入をあげているローン契約にかかる手数料を廃止することでwin-winの状況になると述べた。
【出典】オーストリア内務省ウェブサイト
http://www.austria.gv.at/site/6892/default.aspx#id38670
小規模都市にも都市圏「都市圏のミニ版がスタート」
2010年02月25日小規模の都市圏がイングランド全域で可能となることが、コミュニティ・地方自治省が発表した、「機能・経済市場地域(FEMAs)」についての指針、いわゆる「経済行政指導(economic note)」の中で明らかにされた。
FEMAsは単一の自治体よりも広域の機能上同一あるいは同一市場のエリアである。この単位を元に、各自治体は協同することによって得られる利益について考慮するよう求められることとなる。最初に公式に承認された都市圏であるマンチェスターやリーズのような大規模都市圏とは異なり、これらのより小さな都市圏は、より柔軟性が高い。ここでの連携関係は、たとえば、複数の自治体が地理的に同一の地域で経済評価を実施したり、異なる地域で健康問題に取り組む目的で自治体が別のグループを作ったりするようになるなど、いろいろな課題に協同で取り組む様々な自治体が含まれるようになるといったことがありうる。
*参照 The MJ 25.02.2010 page 2
政府のユニタリーに関する決定が自治体に受け入れられず(「ユニタリー計画はホワイトホールの茶番劇になり下がる」)
2010年02月18日政府は以前エクセター市とノーウィッチ市についてユニタリーへの移行を望む旨を表明していた。一方で、両市を包含するデボン県とノーフォーク県については、両市の部分を除き、現状のまま二層制を維持する意向を伝えていた。両県は両市のユニタリー化に強く反対しており、政府を裁判所に訴える構えも見せている。
ユニタリー化に関する政府の最初の表明の後、コミュニティ・地方自治省の最高幹部がジョン・デナム大臣に対して、2007年に示された基準のいくつかを満たしていないため、エクセター市とノーウィッチ市をユニタリーとする決定については反対である旨の警告を行う書簡を送付していたことが明らかになった。
問題は、当該基準が示された2007年とは経済情勢が現在大きく異なっており、組織改変のためのコストが多くの人の心配の種になっていることである。また、両市を包含するデボン県とノーフォーク県は、両市を除けば大部分が田園地域となってしまい、そのような「残り物」のみからなる県がふさわしい姿と言えるのか、という点も大問題である。
2010年6月までには国政選挙が行われることと、保守党がこれ以上の構造改編を行うつもりはないと表明していることから、両市が近い将来にユニタリーとなるかどうかは現時点では不透明である。
*参照 The MJ 18.02.2010 front page