カテゴリー別アーカイブ: 欧州の地方自治情報

子どもを対象としたソーシャルワーカー雇用に関する地方自治体の苦悩

2009年05月08日 

地方自治体協議会による調査によると、Baby P(母親とそのボーイフレンドの虐待により死亡した幼児)の事件が、子どもを対象としたソーシャルワーカーの採用に大きな影響を与えていることが分かった。
調査によると、5分の3の地方自治体が職員の採用に、5分の2の地方自治体が職員の留任に支障をきたしているという。地方自治体協議会のマーガレット・イートン議長は、「この数字は、弱い立場にある子どもの安全を確保する専門職員を確保し留任することに、地方自治体が非常に苦労していることを示している。この専門的職業がここ数ヶ月非難を受けているため、危機的な状況にある子どもを保護する専門職員を、地方自治体が確保することに大きな悪影響を及ぼしている。」としている。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について (http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=1871942)05.05.09


高齢者向け住宅の充実は我々多くの責任

2009年05月08日 

 高齢者用住宅議員団では、高齢者に適応した住宅を建築する権限を地方自治体に与える新法令を提議している。
 SKL、スウェーデン地方自治体および州議会連合(以下、SKLと略す)は、さらに多くの高齢者に適応した住宅が必要と見なしてはいるが、何ら新しい法令は必要ないと考えている。現在においても、すでに各地方自治体はその種の住宅を自由に建築可能だからである。
 高齢者用住宅議員団は、安全保障住宅とも言うべきコンセプトを導入したいと考えている。これらの住宅は、賃借権制であり、居住者が共通に使用できる部屋を備え、職員は居住者の交際や行事活動などを援助しなければならない。そこでは皆一緒に食事することも可能であり、望めば安全警報も備えて貰える。
 この数年間、 介護会社、地方自治体、住宅建設会社共に高齢者住宅建築への関心が高まっている。各企業と自治体は、議員団が安全住宅として定義している諸条件について様々なアイデアを提案している。高齢者用住宅議員団がSKLと共に実施したアンケート調査によれば、高齢者住宅は、2000年代初めの12000戸から、計画中のものを含めて40000戸近くにまで増加している。

 SKLのアンデシュ・クナーペ理事長は次のように語っている。
1.様々な選択肢を備えた多くの関連業者が必要です。しかし、安全保障住宅について法令化することは、新しい良質な住宅開発の発展を阻害し、さらにコンセプトの混乱をもたらす危険があります。
2.高齢者用住宅議員団は、また、多様な看護と介護を必要とする高齢者向け各種住宅を記述するため、現在使用されている様々な専門用語についても、看護と介護を伴う居住形態の観点を踏まえて補充するべきであると提議していますが、このことは、年金生活者向け住宅補助を最大95%、6000クローナに引き上げる提案をしていることと同様に素晴らしいことだとSKLは評価しています。

【出典】スウェーデンの地方自治体協議会(Swedish Association of Local Authorities and Regions:SALAR)のニューズレター(2009年4月21日発行分)
http://www.skl.se/artikel.asp?C=361&A=59219(スウェーデン語)


ドイツで子供特別手当(Kinderbonus)が4月から給付される

2009年04月27日 

 ドイツ連邦政府は、1月に500億ユーロの第二の経済促進政策を決定した。この中には、子供を対象にする特別給付金が含まれた。
 この給付金は、子供一人当たりに100ユーロとなる。原則として、2009年に1ヶ月間以上の児童手当(Kindergeld)受給権を有する子供(0歳から18歳未満、学生の場合27歳未満まで)に対して、給付される。
 昨年に消費のための給付金が議論された時には、その金額はもっと高かったが、最終的には子供一人当たり100ユーロとなった。しかし、子供が多い家庭ほど、給付額が上がるということでもある。
 この政策を施行する法律は3月に有効となり、4月からは支給が開始された。支給は普通の児童手当と併せて自動的に行われるため、申請は必要ない。
 受ける側の両親は、貯金するという人もいるが、世論調査によれば、多くの人は子供が直接利益を受けるものに使うと答えている。

【出典】
http://www.arbeitsagentur.de/nn_26252/zentraler-Content/A09-Kindergeld/A091-steuerrechtliche-Leistungen/Allgemein/Kinderbonus.html

http://www.zeit.de/online/2009/17/kinderbonus-umfrage


自治体再編で9つの新ユニタリーが誕生

2009年04月01日 

2009年4月1日、かねてから伝えられていた通り、イングランドの自治体再編成が行われ、一層制の自治体であるユニタリー(unitary)が新たに9つ誕生した。
 チェシャー県、ベッドフォードシャー県、コーンウォール県、ノーサンバーランド県、ダーラム県、シュロップシャー県及びウィルトシャー県の7つの県で、県と県下の市が合併し、計9つのユニタリーに再編成された。7つの県下には、合計37のディストリクト(日本の市町村にあたる基礎自治体)があった。
 チェシャー県及びベッドフォードシャー県はそれぞれ2つのユニタリーに分割されたが、それ以外の5つの県は、もとの県境を維持してそのままユニタリーに移行した。これら9つの新ユニタリーの人口は合わせて320万人である。
 政府が主張している今回の自治体再編成の根拠は主に二つある。一つは、二層制の地域で生じる、「どちらの自治体がどのサービスを提供しているのか分からない」といった混乱を避け、公共サービスを提供する自治体を一つに統一することである。二つ目は、自治体の規模を大きくすることで経費を削減し、金銭的効率性(value for money)を向上させようという狙いである。今回ユニタリーとなった自治体が、ユニタリー化申請の際、再編によって削減できると主張していた経費の額は、7自治体合わせて1億ポンドであった。今後これが実現できるかは、各自治体の手腕にかかっている。
 ユニタリー化によって多くの自治体職員のポストが失われ、合計300にも上る上級職員のポストが廃止された。しかしそれのみならず、選挙区も大幅に拡大し、地方議員の議席数は、全地域合わせて2037議席から725議席に減らされた。このように非常に広い選挙区でも真に民意を反映した地域民主主義を実践できるかという問題は、今後に残されるだろう。
 チェシャー県から誕生した二つのユニタリーであるチェシャー・イースト市及びチェシャー・ウェスト・アンド・チェスター市、更にダーラム県、ノーサンバーランド県では昨年既に、新ユニタリーが誕生するまでの暫定的な議会である「影の議会(shadow councils)」の議会選挙が行われていたが、今回の再編をもって正式な議会となった。その他の5つの新ユニタリーでは、今年6月の地方選挙で議員が選ばれることになっている。
 今回の自治体再編によって、イングランドの住民にユニタリーの住民が占める割合は60%となった。
【参照】
http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/7974898.stm


安全性増加へ向かっての良い第一歩

2009年03月24日 

 2月9日月曜日に、「コミューンおよびランスティングの公開会議の安全性」調査報告がコミューン大臣、マッツ・オデルに提出された。
 調査報告では、重要な脅迫の恐れがある場合には、コミューンおよびランスティングの議長は、警察との話し合いの後、公開会議でセキュリティ・コントロールを実施することができるようにすることが提案されている。
 しかしながら、政治家に対する脅迫や暴力の問題に対処するには、さらに厳しい法律が必要である。この調査報告の提案に対し、SKLはこのように考えている。
 「これは、地方の民主主義を保護する方法の一つですが、脅迫や暴力の問題に対処するには、極めて不十分です」とSKL議長アンダーシュ・クナーペは述べている。
 SKLは、この問題に対応するには、より厳しい法律が必要であると考えている。
 しかしながら、政府は未だにこの問題に関する何らの提案も提出していない。議員を特別扱いすることはできない、というのがその理由で、実際問題として今後も政治家の侵害行為に対しての護衛は行政職員のための護衛を下回りそうだ。
 「万人共通の最善を尽くす責任を担う人々のために妥当な状況を生みだすことが重要です。それらの人々がその任務を果たした事によっていやがらせにあうリスクがあることを受容する事はできないことです」とアンダーシュ・クナーペは述べている。

* SKLとは、英語でSALAR(Swedish Association of Local Authorities and Regions:SALAR)のことを指す。
【出典】スウェーデンの地方自治体協議会(Swedish Association of Local Authorities and Regions:SALAR)のニューズレター(2009年2月10日発行分)
http://www.skl.se/artikel.asp?A=55811&C=2977(スウェーデン語)


コミューンから消える15000以上の職場

2009年03月24日 

 経済状況の変化により、2010年度までにコミューンおよびランスティングは15000人の職員の削減を余儀なくされる。
 SKLが依頼したアンケート調査はそのように示している。
 この調査によると、2009年度にはコミューンの職員が4800人、ランスティングの職員は3000人減少することが示されている。2010年度にはさらにそれぞれ6100人、および1300人の被雇用人が減少する。このことは、今後2年間に合計15200人の職員が減少することを意味している。
 「未だ全ての返答は得られていないため、この数字は、十中八九は少なく見積もられたものです」とSKLの議長アンダーシュ・クナーペは述べている。「しかし、調査結果は、明らかに(SKLの)組合員の間に今後の景気の先行きに関する大きな不安があることを示しています」
 人件費は、コミューンおよびランスティングの費用総額の3分の2近くを占めている。そのため、不景気下でも人件費以外の削減をすることは難しい。
 「もちろん税金を引き上げることもでき、幾つかの自治体はそうしています。しかし多くの自治体は税率の引き上げを避けたいのです」
 スウェーデンのコミューンおよびランスティングは、解雇を避け社会福祉の質を確保するために、2009年および2010年におけるコミューン部門への特別な国援助金を要求している。

*SKLとは、英語でSALAR(Swedish Association of Local Authorities and Regions:SALAR)のことを指す。
【出典】スウェーデンの地方自治体協議会(Swedish Association of Local Authorities and Regions:SALAR)のニューズレター(2009年2月10日発行分)
http://www.skl.se/artikel.asp?A=55811&C=2977(スウェーデン語)


住民のボランティア活動の全国調査が発表される

2009年03月20日 

市民の社会における自発的な活動、すなわちボランティア活動が社会の結合に不可欠であり、社会的な粘着剤であることは広く認識されている。
記事本文はマンスリートピック2月分に掲載しております。
https://www.jlgc.org.uk/jp/information/index.html#monthly


ドイツにおける地方自治体のバック・オフィス共同化(Shared Services)

2009年03月20日 

1990 年半ばから、地方自治体の行政管理に対する要求は高まっている。まず、市民サービスの質、そして行政の効率化に対する期待が強まった上、政治的参加の多様化への期待も高まった。
記事本文はマンスリートピック2月分に掲載しております。
https://www.jlgc.org.uk/jp/information/index.html#monthly


金融危機のオーストリアでの影響等

2009年03月12日 

 オーストリア国内での失業率が急上昇している。これまで5%前後で推移していた失業率は、2009年の1月末の時点で8.3%まで上昇した。
 これは先月比の12.2%増となり、国内では301,529人が失業者として登録されている。この傾向は特に若い世代で顕著であり、若年労働層の22.9%が失業状態にある。
 これまでプラス成長を続けてきた国内経済も、8年ぶりとなるマイナス成長が見込まれている。国内需要の減少と、輸出相手国内の需要の減少を理由として急激に輸出額が落ち込んだ結果として、オーストリア国内の経済調査機関「WIFO(オーストリア経済調査研究所)」の調査では、2009年のGDPは0.5%のマイナス成長となる見込み(2008年12月時点での発表)、また1月19日に発表された欧州委員会の調査結果によると、前年度比でマイナス1.2%となる見込みということである。

【出典】
オーストリア連邦政府ウェブサイト
http://www.bka.gv.at/site/6632/default.aspx#id33669
在オーストリア日本国大使館
http://www.at.emb-japan.go.jp/jp/index.html

【参考】
CIA The World Factbook https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/
Budapest Business Journal
http://bbjonline.hu/
WIFO(オーストリア経済調査研究所)
http://www.wifo.ac.at/


連邦政府の行政手続簡素化・規制緩和に地方自治体の参加

2009年03月12日 

 2006年四月、ドイツ連邦政府は行政手続に伴う負担を軽減するプログラムを議決し、開始させた。
 その目的は、連邦政府の規制で義務付けられている情報提供のために、企業、市民、そして行政自体に現在かかっている負担を軽減することであり、連邦レベルだけでなく、州及び地方自治体も含まれている。
 情報提供のために現在かかっている負担とは、たとえば情報の提出、申請書等の記入、関連資料の収集や保存などである。目標は、2011年までに情報提供による負担をすべて把握し、25%カットを実現することである。このため、欧州で広く使われているオランダ政府が開発した「標準コストモデル」を利用することになっている。プログラムを発足させたと同時に、独立した機関として、「国立規制監理委員会Nationaler Normenkontrollrat」を設立した。この委員会は、目標を達成するために助言を行うほかに、新しい規制がもとらす負担を最低限に抑えるために行動する。
 最初の軽減対象は企業に対する情報提供負担である。2006年末までの間、すべての連邦官庁は、企業に情報提供を義務付けられているEUまたは連邦規制による情報提供は1万900件が存在すると明らかにしてきた。そのうちの2100件の情報提供だけで、約270億ユーロの費用がかかった。負担の内容と分量が明らかになったため、次のステップはいくつかの段階に分けて負担を軽減することである。2009年末まで企業に対する情報提供の負担を4分の1に軽減する予定である。

 他の事業もこれから始まっている。市民や行政に対する負担の削減が目的になっているため、地方自治体は市民にサービスを提供する重要な主体のひとつとして最初からこの問題への対応に参加していた。
 2009年2月に初めて連邦、州および地方自治体すべてが関係するモデル事業が発足している。その内容は、住居手当(低所得者に対する手当て)と両親手当て(子供が生まれた後に子育てのために仕事が休めるよう、減った収入分を補填する手当て。両親のうち一人に支給される。)の申請と支給に関する負担の調査である。現在、年間では住居手当に対する申請は100万件(初申請、再申請、変更申請を含む)、両親手当ては75万件である。
 モデル事業では、法に基づく申請から決定通知までその過程すべてにおける、市民に対する情報提供の負担、そして行政に対する情報提供の負担等を調査することとなっている。また、他のサービス(たとえば、両親手当ての場合、児童手当の申請とその支給)との重複や関連には配慮することも重視される。

 地方自治体を代表する自治体3団体(ドイツ都市会議、ドイツ郡会議及びドイツ市町村連盟)はこのモデル事業へ参画し、地方自治体にとっては、行政手続による負担を軽減することは、市民のためだけでなく、行政内部の簡素化のためにも重要であると強調している。

【出典】

REGIERUNGonline, ‘Bürokratieabbau
http://www.bundesregierung.de/Webs/Breg/DE/Buerokratieabbau/buerokratieabbau.html

Pressemitteilung der Bundesregierung 11. 2.;19.2.2008
http://www.bundesregierung.de/nn_1494/Content/DE/Pressemitteilungen/BPA/2009/02/2009-02-11-nkr-pilotprojekt.html

http://www.bundesregierung.de/nn_1272/Content/DE/Pressemitteilungen/BPA/2009/02/2009-02-19-buerokratieabbau-bund-kommunen-vereinbaren-zusammenarbeit.html


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