地方自治体協議会(LGA)は、道路の状態により生じた被害に補償を求める要求の増加が、道路補修に要する予算を枯渇させているとして、「負ければ報酬は受けない」弁護士を非難している。
昨年イングランドとウェールズの地方自治体では、道路にできた穴により被害を受けた人へ5300万ポンド(約79.5億円)の補償金を支払ったが、これは道路の補修に支払った額より、70万ポンド(約1億円)も多かった。LGAの交通委員会の委員長であるDavid Sparks氏は、「悪循環に陥っている道路の維持費用は、地方自治体の支払い能力を超えている。この状況は道路補修予算の半分を食いつぶしている弁護士たちにより、更に悪化するだろう。」と述べている。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について 15.05.2009(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=1899913)
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財政緊縮のために毎年小学校100校を閉校
2009年05月15日学校が不足するという懸念にもかかわらず、過去10年間で1000以上の小学校が閉校に追い込まれてきた。
テレグラフ紙が調査をした自治体の3分の1では、生徒収容数が限界に近づいているか、既に学校を増築させられたと述べていた。政府が空き机のある学校を閉校するよう自治体に指針を通達したことを考えると、政府は自治体等からの批判を受け止めるべきである。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について12.05.2009(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=1893174)
地方自治体に対する世評の低下
2009年05月08日地方自治体に対する住民の満足度が低下している。
最新の統計によれば、自分の所属する地方自治体のサービスに満足している住民は、半数もいないという。Place Survey(コミュニティ・地方自治省が行っている各地方自治体内で実施された調査)による最新のデータが、この6月にコミュニティ・地方自治省によって公表されることになっている。2006年に行われた前回の調査では、平均して53%の住民が、地方自治体に対して満足感を示していたが、2008年にはその平均が45%になっており、その間で住民の満足度に著しい低下が起こっていることになる。不思議なことに、個々の地元地域に対する満足度は逆に上昇しており、約79%の住民が、彼らが住んでいる地域自体には満足しているという。しかしながら地方自治体が目に見える改善を行っても、自治体はどんな評価も得られることはない。人々が不満を抱いている理由の一つには、十分な情報を持っていない住民に対する地方自治体の情報提供不足が挙げられる。また別の理由として、カウンシル・タックスの増税があげられる。なぜならカウンシル・タックスは、住民が一番直面している税金であるので。一方で、アイスランドの銀行問題や、Baby Pの問題といった地方自治体に関連する一連の最近のニュースは、住民が抱いている不満の根本的原因ではない、という主張もある。
*参照The MJ 07.05.2009
60年代からの広がる所得差
2009年05月08日2005年の総選挙後の3年間で、低所得者の所得が減少し、逆に高所得者の所得が増加しているという事実をみると、ゴードン・ブラウン首相統治下の英国政府は、1960年代初めからの記録によると、どの時代よりも不公平である。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=1887312)08.05.09
子どもを対象としたソーシャルワーカー雇用に関する地方自治体の苦悩
2009年05月08日地方自治体協議会による調査によると、Baby P(母親とそのボーイフレンドの虐待により死亡した幼児)の事件が、子どもを対象としたソーシャルワーカーの採用に大きな影響を与えていることが分かった。
調査によると、5分の3の地方自治体が職員の採用に、5分の2の地方自治体が職員の留任に支障をきたしているという。地方自治体協議会のマーガレット・イートン議長は、「この数字は、弱い立場にある子どもの安全を確保する専門職員を確保し留任することに、地方自治体が非常に苦労していることを示している。この専門的職業がここ数ヶ月非難を受けているため、危機的な状況にある子どもを保護する専門職員を、地方自治体が確保することに大きな悪影響を及ぼしている。」としている。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について (http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=1871942)05.05.09
自治体再編で9つの新ユニタリーが誕生
2009年04月01日2009年4月1日、かねてから伝えられていた通り、イングランドの自治体再編成が行われ、一層制の自治体であるユニタリー(unitary)が新たに9つ誕生した。
チェシャー県、ベッドフォードシャー県、コーンウォール県、ノーサンバーランド県、ダーラム県、シュロップシャー県及びウィルトシャー県の7つの県で、県と県下の市が合併し、計9つのユニタリーに再編成された。7つの県下には、合計37のディストリクト(日本の市町村にあたる基礎自治体)があった。
チェシャー県及びベッドフォードシャー県はそれぞれ2つのユニタリーに分割されたが、それ以外の5つの県は、もとの県境を維持してそのままユニタリーに移行した。これら9つの新ユニタリーの人口は合わせて320万人である。
政府が主張している今回の自治体再編成の根拠は主に二つある。一つは、二層制の地域で生じる、「どちらの自治体がどのサービスを提供しているのか分からない」といった混乱を避け、公共サービスを提供する自治体を一つに統一することである。二つ目は、自治体の規模を大きくすることで経費を削減し、金銭的効率性(value for money)を向上させようという狙いである。今回ユニタリーとなった自治体が、ユニタリー化申請の際、再編によって削減できると主張していた経費の額は、7自治体合わせて1億ポンドであった。今後これが実現できるかは、各自治体の手腕にかかっている。
ユニタリー化によって多くの自治体職員のポストが失われ、合計300にも上る上級職員のポストが廃止された。しかしそれのみならず、選挙区も大幅に拡大し、地方議員の議席数は、全地域合わせて2037議席から725議席に減らされた。このように非常に広い選挙区でも真に民意を反映した地域民主主義を実践できるかという問題は、今後に残されるだろう。
チェシャー県から誕生した二つのユニタリーであるチェシャー・イースト市及びチェシャー・ウェスト・アンド・チェスター市、更にダーラム県、ノーサンバーランド県では昨年既に、新ユニタリーが誕生するまでの暫定的な議会である「影の議会(shadow councils)」の議会選挙が行われていたが、今回の再編をもって正式な議会となった。その他の5つの新ユニタリーでは、今年6月の地方選挙で議員が選ばれることになっている。
今回の自治体再編によって、イングランドの住民にユニタリーの住民が占める割合は60%となった。
【参照】
http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/7974898.stm
仕事復帰を求められる元ソーシャルワーカー
2009年03月06日最近退職したソーシャルワーカーは、人材不足のため仕事に復帰するよう強く求められている。
地方自治体協議会は、人材不足は、子供を危機にさらす可能性があることを危惧し、子どもたちのためにソーシャルワーカーを募集するキャンペーンを始めた。報告書「尊重と保護(Respect and Protect)」は、「Baby Pの悲惨な事件の後遺症が依然として残っている。ソーシャルワーカーに対する敬意が失われれば、児童保護を自らキャリアとして選択してきた人々が考えを変えるという歴史的事実がある。」と述べている。
※参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=283252)より
3.3.09(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=1666344)
地方自治体が福祉や教育を民間企業に委ねる見込み
2009年03月06日保守党が優勢の地方自治体で、何十億ポンドにも相当する民間委託を進めており、イングランド各地の地方行政サービスに新しい民営化の波が押し寄せている。
エセックス県は、経費節減のために所管する行政サービスの全てあるいはほとんどについて外部委託を進めている多くの地方自治体の一つである。エセックス県のリーダー議員のハリングフィールド卿は「住民の高まる期待や需要に応えるため、地方自治体も変革し、今までとは違うやり方をしなければならない」と述べている。
※参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=283252)より
4.3.09 (http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=1669727)
最後の包括的業績評価の結果が発表される(7年間行われてきた包括的業績評価もこれが最後)
2009年03月06日新たな包括的地域評価システム(CAA)の稼動を前に、最後の包括的業績評価(CPA)が監査委員会によって発表された。
これによると、多くの自治体において大きな改善がみられ、全体的として良好な自治体が多い。しかしながら、深刻な問題を抱える自治体も存在している。特定のサービス分野に関していえば多くの自治体が改善してきたが、児童福祉分野においては、多くの自治体で悪化している。
この最後の包括的業績評価において、最低ランクの自治体は皆無であり、62の自治体が最高ランクを獲得、最低ランクから2番目(1つ星)と評価されたのは4つの自治体に留まった。
高齢者ケア関連の資金を見直しか
2009年03月06日地方自治体と中央政府との協議により、高齢者ケアの資金を完全に中央政府の資金とする、もしくは教育関連の資金と同じく一定の制限を自治体に課すという可能性が浮上した。
現在は、それぞれの自治体が受益適格者決定の基準を定めており、ある程度の柔軟性が認められている。しかし、自治体間でサービスの水準が一定ではないうえ、大きな差が生まれる可能性があるとの批判を受けている。また、今後、高齢者人口の増加に伴い、高齢者ケアに関する需要がますます高まることが予想されている。これを受け、1つの案として、中央政府が管理する社会保障基金の創設が検討されている。しかし、ある地方自治体関係者は、「中央政府の制限付の社会保障基金は教育分野のようには上手くいかないだろう。今後も地方自治体によるサービスの管理及び提供が必要だ」語っている。
※参照 5.3009 LGC(Local Government Chronicle)