政府は昨日のクイーンズ・スピーチ(女王による政府の施政方針演説)で、今季国会で法制化を目指す優先事項の概要を示した。
スピーチで示された法案には、貧困者への在宅介護の無償提供、教員に新たな教員免許の取得を要求すること、地方自治体に洪水の危機管理への責任を与えることなどが盛り込まれている。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について 19.11.2009(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=5925895)
カテゴリー別アーカイブ: 英国
地方自治体には地域のごみ処理の十分な権限がない(地方自治体がごみ処理問題への不安を認める)
2009年11月13日地方自治体には産業廃棄物等の民間部門から出るごみを管理する権限が十分になく、このことが、ごみのリサイクルや埋め立てに関するEUの基準を達成することへの重大な障害になるおそれがある。
家庭ごみのリサイクルに関しては2000年度と比較して11.2%の大幅な改善を見せているが、地方自治体の管理が及ばない産業廃棄物に関しては異なる結果となっている。地方自治体協議会の環境部会は、地方自治体がごみ処理施設を改善できるようにするために、政府に対して埋め立て税(Landfill Tax)を地方自治体に配分するよう要望している。
*参照MJ 12.11.2009 p.5
地方自治体に影響を及ぼす数々の法案が女王の裁可を受ける
2009年11月13日①地域民主主義・経済開発・建築法
地域の経済政策や協働を保証し、また地元の意思決定に住民が直接的に参加できる機会を提供するため、地方自治体にさらなる権限を与える法律
②徒弟制度・技能・児童・学習法
義務教育を18歳までに延長し、25歳までの学習障害者及び少年犯罪者たちに教育の機会を確保する法律
③検視官及び司法法
イングランドとウェールズで全国検視官サービスを開始し、遺族のため上訴制度を含めた新しい権利を創出するとともに、検視官に新たな権限を与えるための法律
④平等法
人種、性別、障害、年齢、性的志向、宗教や信念、妊娠と母性や性転換の権利を守り、また年齢差別と戦うための、全体的な単一公的団体である「Equality Duty」を創設するための法律
⑤健康法
国民医療サービス(NHS)の質を改善し、また公衆衛生の改善を目的とした法律。特に自分で成人社会福祉サービスをアレンジしている人々からの苦情を考慮して、地方自治体オンブズマンによる監視事項を拡大する。
⑥海洋沿岸アクセス法
海域をよりよく保護し、海岸線沿いに途切れのない海岸道を整備し、これに地方自治体が関与できるようにするための法律。
⑦福祉制度改革法
給付金生活から働く生活に変えようとする人々に対する奨励と支援、また障害者に対してより多くの選択と自己決定の機会を与えることを含む福祉と社会保障体系の改革を目的とした法律。
⑧警察業務・犯罪対策法
警察業務の有効性と説明責任を増加させ、警察業務の意思決定において地元住民により強い発言権を与え、さらに地元の警察業務の優先事項に集中させるため、警察機関により大きな自由裁量を与えることを目的とした法律。
⑨追加的ビジネスレイト法
経済開発を促進させる事業の支出を増加させるため、ビジネスレイトの納税義務者に対して付加的な税を課すことができるようグレーター・ロンドン・オーソリティ(GLA)や一定の地方自治体に権限を与える法律
労働党のマニフェストに有名百貨店John Lewis方式の公共サービスを盛り込む
2009年11月13日病院、学校、レジャー施設や住宅施設で、職員や利用者は、投票で賛成が得られれば、自分たちでその施設を管理できるようになる。
このJohn Lewis型共同経営方式が、労働党の総選挙用マニフェストでの急進的な中心政策となりそうだ。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について 12.11.2009(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=5612435)
公共部門の1000億ポンドの経費削減により、8700人が解雇されると労働組合が警告
2009年11月13日政府の今後二年間で1000億ポンド(約15兆円)の経費を削減する計画により、公共サービスは前代未聞の歳出カットを迫られている。
地方自治体における失業者数は、過去3ヶ月の1700人から次の3ヶ月で7000人に増加し、3倍に達する見込みである。地方自治体は、図書館やケアホームのスタッフ配置など「必須ではない」サービスの削減から着手している。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について 09.11.2009(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=5520296)
地方自治体自身による支出割合は、当該地域における公共支出の5%に過ぎない
2009年11月06日13の地域で試験的に実施されているトータル・プレイス事業によって明らかになった数字によれば、地方公共支出のわずか5%にしか、地方自治体の権限が及んでいないことがわかった。
ある地域では、公共サービスについて一人当たり7000ポンドが支出されているうち、350ポンドのみしか地方自治体の民主主義的コントロールの下にないことが明らかになった。総額に換算すると、一地域平均30億ポンドの公共支出のうち、およそ1億5000万ポンドのみが地方自治体の権限下にあることになる。
この試験事業の報告書では、異なる公的部門による重複支出も明らかにされている。具体的には、ダラム市には住宅供給のために47の異なる補助金が支出されていた。また、ルートン市、セントラル・ベッドフォードシャ-市には、49の異なる公共組織があった。
これらの数字は、地方自治体の公共支出に関する権限が小さいこと、地方における多くの意思決定は、地方自治体ではなく当該地域のニーズを反映しているとは言えない中央政府寄りの他の機関によってなされているということを明らかにしている。LGAと地方自治体は、この結果をもとに、地方歳出における地方自治体の権限拡大を求めていくこととしている。
*参照MJ 05.11.2009 Front page
地方自治体が増税率を抑制
2009年11月06日イングランドの地方自治体におけるカウンシルタックスの増額率が、過去10年以上で最低となることがLocal Government Chronicle(地方自治体職員向けの機関誌)の調査により明らかになった。
回答した81の地方自治体の平均増額率は今年の3%のほぼ半分である1.6%であり、また34の地方自治体では凍結または削減する予定となっている。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について 05.11.2009(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=5402974)
無料の保育施設が予算不足の影響を受けている
2009年11月06日財政危機により、公立の保育園がスタッフの解雇、クラス規模の拡大、場合によっては閉鎖される事態となり、何千もの家庭が就学前教育の機会を失う可能性がある。
これは、保育所を運営する地方自治体、民間、ボランティアセクターそれぞれに対し、予算をより公正に配分するという政府方針の結果である。Dawn Primarolo児童担当大臣は先週、地方自治体幹部に対し、保育所を維持するよう指示した。
*参照 地方自治体協議会(Local Government Association)の「News headlines」について 03.11.2009(http://www.lga.gov.uk/lga/core/page.do?pageId=5364515)
ブライトン・ホーブ市が、芝刈りの手入れをするために、羊とボランタリーの羊飼いを起用
2009年10月30日近年地方自治体は節約を目指しているが、そんな中ブライトン・ホーブ市が、芝刈りの費用を削減するため、羊の群れの世話をするボランタリーの羊飼いを起用した計画で大成功を収めている。
約200頭の羊は、イースト・サセックスの農場から借り入れ、その羊たちは、住宅街や学校に近い6つの草地で活躍している。ここ数年、芝刈りやその処分経費が、年間で約2万5千ポンド増加してきたが、一方「The Urban Shepherd Scheme」と呼ばれるこの羊を起用する計画では、1800ポンドのみの経費で済むようになった。この計画は、経費を節約するだけではなく、玄関先で子どもたちが動物と触れ合え、またボランタリーの羊飼いに、コミュニティで働くのと同様、自然の中で働く機会を与えるという利点もある。
地方自治体の条例制定について政府からの許可を不要に
2009年10月30日条例制定には中央政府の大臣の許可が必要で、時間がかかり煩雑な手続きを要するというのが、長い間にわたる英国の地方自治の特徴であった。
この自治体への負担を減らし、地方の特殊な事情に即した条例の導入をし易くするための約束が政府の地方自治白書「地域社会の繁栄と強化」に盛り込まれた。コミュニティ・地方自治省のジョン・デナム大臣は、これはすぐに実行に移されるべきであり、自治体は条例制定についての地域住民からの合意さえ得られれば済むようになるだろうと発表した。
また、自治体が中央政府の承認を必要としている他の行政分野においても、協議手続制consent regimesを採る数が現在の52から少なくとも半分に減るだろうと発表した。
この計画は地域社会の抱える問題やニーズに対して自治体がより効果的かつより迅速に対応できるようにし、行政的な負担を軽減することを目的としている。
*参照MJ 29.10.2009 P.3