カテゴリー別アーカイブ: オーストリア

「教育の質」への投資

2010年07月01日 

「連邦政府は、『教育保障金は効果的だ』という考えを変えない」と、6月8日閣議後の会見で、フェイマン連邦財務相は強調した。
若者の就業率と職業訓練に関する最新のデータによれば、オーストリアはヨーロッパ諸国の中で2番目に若者の失業率が低いばかりでなく(2010年5月データでは、4月水準より10.7%改善した)、失業期間の長さが最少であった(平均3ヶ月間)。
2年前に経済危機が始まって以来初めて、オーストリアでは就業率が上昇し、失業者数は減少している。企業における職業訓練生数が今期4%減少したが、これは企業内研修の増加によるものである。教育保障金のおかげで、職業訓練を望んでいる全ての者が今秋までに何らかのポストを見つけられるだろうと財務相は話している。
財務相はまた、これらのことを根拠として「教育の質への投資は必要である。制度不備を補うために、就学前の子どもたちに対しても何らかの政策が必要だ。全日制学校数の増加と同時に、10歳から14歳の年齢の子どもたちへの一貫教育を打ち出すことも必要だ。」としている。

【出典】オーストリア内務省ウェブサイト
http://www.austria.gv.at/site/6892/default.aspx#id39975


4月25日大統領選結果

2010年05月15日 

 オーストリアでは、4月25日に大統領選挙が行われ、現職のハインツ・フィッシャー大統領が再選を果たした。
 選挙結果を得票率から見ると、社会民主党及び現職大統領にとっては良い結果となっている。ハインツ・フィッシャー大統領は無所属の立候補者であったが、社会民主党から多くの支援を受けていた。その結果、78.9%の得票で右派系立候補者のバーバラ・ローゼンクランツ氏を退けた。バーバラ・ローゼンクランツ氏は、移民政策への反対、ヨーロッパ・オーストリア自由党への反対を訴え、15.6%の得票率に終わった。キリスト教原理主義者のルドルフ・ゲーリング候補は、社会における女性の役割など、いくぶん時代錯誤な主張が原因となり、得票率5.4%と大敗した。

<低い投票率>
 ただし、49.2%という低い投票率を見ると、状況は楽観視できるものではない。オーストリアの新聞「Die Presse」紙が述べているように、少なくとも2回目の選挙を回避できたことはよかった。同紙は、「私たちはとてもこれ以上の緊張状態に耐えられなかった」と述べている。

 再選を果たしたハインツ・フィッシャー大統領は、祝賀パーティにおいて、自分が大勝した州を列挙し、この低投票率の問題には触れなかった。確かにオーストリア9州のうち8州において、ハインツ・フィッシャー氏は4分の3の得票率を獲得し、最も得票率の高かった州では80%を得た。しかしこれらの結果はいずれも自由選挙、秘密選挙が保障された地域での得票率でしかない。というのも、社会民主党と連立を組む中道右派政党のオーストリア人民党は、今回ハインツ・フィッシャー氏を支援せず、また独自候補を立てることもしなかった。その上選挙の直前には数名のオーストリア人民党員が有権者に大統領選では白票を投じるように訴えたのである。

<野党候補>
 今回の大統領選挙では野党も支持者拡大に苦戦した。野党陣営では選挙戦が始まった段階で、バーバラ・ローゼンクランツ氏は30%から35%の票を獲得できると見込んでいたが、結果的にはその2分の1の得票に終わった。右派色が強いバーバラ・ローゼンクランツ氏は、彼女の国家社会主義への考え方等から保守層の票を多く獲得できると見込まれていたが、彼女の夫が現在は法的に禁止された極右政党に属していたことなどが裏目に出てその目論見がはずれる結果となった。

【出典】雑誌「Spiegel」
http://www.spiegel.de/international/europe/0,1518,druck-691206,00.html


銀行税の導入を検討

2010年03月01日 

 オーストリア連邦政府は近く銀行税を導入することを検討している。これは、2010年2月22日に行われた連邦財務相を議長とする銀行首脳会議(サミット)の結果を受けたものである。同サミットには、金融担当相のほかオーストリアの大手銀行頭取たちが参加し、オーストリア国立銀行が提示した調査結果に基づき議論が行われた。

 検討中の銀行税について、まだ詳細は決まっていないが、導入は2011年以降になる見込みである。連邦財務相は同銀行税による歳入は約5億ユーロになるとの試算を発表した。また税率については、連結財務諸表上の額から様々な控除を差し引いた後の課税標準に対し、0.07%から0.1%が適用される見込みである。連邦財務相は、銀行に対するこのような一体課税は十分正当化されると強調している。

 連邦財務相及び金融担当相双方ともに、同銀行税が顧客手数料に上乗せされることにはならないと述べている。顧客手数料への上乗せを防ぐため、銀行手数料は厳格に調査されることとなる。加えて、銀行間の競争が銀行にかかる負担の問題を解決するだろうと連邦財務相は説明している。財務相を議長とする新たな検討部会の初会合が2010年3月8日に開催されることとなっており、政府の閣僚及び各銀行の代表者から構成される同部会において政府に対する専門家の意見、答申が取りまとめられる予定である。

 2010年2月24日国会の一般討論において、金融担当相は、銀行も含めた社会における全ての法人・団体が公平に国家歳入に貢献しなければならない必要性を繰り返した。同相によれば、デリバティブ、オフ・バランスシート取引等の投機的金融派生商品が銀行税の課税対象となる見込みである。加えて、同税の導入はローン契約にかかる手数料の廃止と同時に実施することを金融担当相は強く求めている。この同時実施により、民間企業等への財政負担を軽減できると見られており、毎年1億5千万ユーロもの歳入をあげているローン契約にかかる手数料を廃止することでwin-winの状況になると述べた。

【出典】オーストリア内務省ウェブサイト
http://www.austria.gv.at/site/6892/default.aspx#id38670


選挙イヤーのスタート

2010年01月11日 

 オーストリアでは、2010年4月に連邦大統領選挙が予定されている。これに向けて、各党が重点政策に関する協議を党内で開始している。
 先頭を切ったのは、オーストリア社会民主党(SPO)で、最重要政策として失業対策と教育制度改革をあげている。教育制度改革については、全日校の受入れ生徒数の増加、新中級学校(’New Middle School’)パイロット事業の拡大を求める党内の声が反映されている。連立を組んでいるオーストリア国民党(OVP)は学校の受入れ生徒数の増加を求めており、フレイマン財務相はこのOVPとの関係重視も強調している。ウィーンでは、受入れ生徒数が50%増加していることから、他地域の増加率が10%程度では、高まる需要に応えられないと見られている。

 オーストリア国民党(OVP)の重要政策としては、経済政策と国防政策があげられている。経済政策について、昨今の金融危機の現状を踏まえてオーストリア国立銀行(OeNB)を完全国有化すべきだとの声も党内にはある。現在OeNBは、70%を国が所有、30%を他の金融機関が所有している。プロール国務大臣は、「OeNBは銀行の監督という点で重要な役割を担っている。OeNBに他の金融機関が出資していることには、歴史的な理由があるとはいえ、これはもう時代遅れである。」と述べている。またOVPは、経済回復の兆しが見えてきている状況下にあって、中小企業支援政策(SMEs)及び現行の支援事業の拡大を目指している。SMEsの拡大実施のため、25百万ユーロが今年投じられる見込みとなっている。

【出典】
オーストリア内務省ウェブサイト
http://www.austria.gv.at/site/6892/default.aspx#id37975


オーストリア公共放送に対する欧州委員会の調査

2009年11月16日 

 10月28日に欧州委員会は、オーストリア放送協会の財政状況に関する調査を終了した。
 オーストリア政府が個別の法律の改正に合意し、国家補助に係る同協会の財政計画はEU規制を遵守しているという結論となった。欧州委員会のコミッショナーは、「オーストリア政府の合意内容は、高い質の公共サービスを提供しつつ、放送・通信分野における競争性を維持するという観点からバランスがとれた内容となっている。」と話している。これにより、5年間にわたって実施されてきた調査が終了した。
 放送・通信省大臣のジョセフ・オスターメイヤーは、調査結果にとても満足しているとし、
 ・質の高い放送
 ・多様な公共放送
 ・高い透明性
 ・新しいサービスと受信料へのコントロール
と、欧州委員会から評価された点を繰り返しながらそれへの同意を表明した。また、欧州委員会との合意内容についても、1年以内にオーストリア国内で実施するとしている。

 詳細な内容としては、同協会の新しいメディアサービスは、事前に審査されなければならないとされた。これを受けて、今後同協会から独立した放送・通信審査機関が設立される見通し。これによりオスターメイヤー大臣は、提供するサービスのコンセプトを明確にし、オーストリアのメディア業界における透明性を向上させたいとしている。
 加えて、サービスの質を保証するための機関も設立される。この機関の設立は、オーストリア視聴者協会が中心となって行う予定で、同機関はオンラインのサービス、テレビチャンネルも含めた全てのサービスについて質の基準が遵守されているかを審査することとなる。
 財政計画については、EUから特段の批判はなく、受信料は5年間は変動しないこと、またその額については放送協会会長からの提案を受けて視聴者協会が合意することなどがあげられている。

【出典】
オーストリア連邦政府ウェブサイト
http://www.austria.gv.at/site/6632/default.aspx#id37088


フォアアールベルク州議会選挙結果

2009年09月28日 

 9月20日(日)にフォアアールベルク州議会選が行われ、ハーバート・ソースグルバー州知事率いる人民党(OVP)が前回に引き続き絶対過半数を獲得した。
 投票率は67.41%であった。各党の得票率及び獲得議席数は以下のとおり。

 人民党(OVP)50.82%(-4.1%)、20議席(-1)
 自由党(FPO)25.25%(+12.31%)、9議席(+4)
 緑の党(the Green)10.37%(+0.2%)、4議席(0)
 SPO 10・06%(-6.81%)、3議席(-3)

 フォアアールベルク州は、スイスとリヒテンシュタインとの国境に接するオーストリアで最も小さい州。好調な経済状況を背景に財政的に豊かな州であり、また生活水準も高い。保守系の伝統がある労働組合が組織されていることから、製造業は右派を支持している。多くのアルプススキーリゾート地としても知られ、州内の地方自治体のいくつかは財政的に非常に潤っている。
 州議会には36の議席があり、中道右派であるOVPが絶対過半数を占めている(戦後は1999年に一度だけ過半数を下回ったことがあるだけである)。ただ政権としては、FPOとの連立政権となっている。
 驚くほど外国人人口が多いフォアアールベルク州では、FPOと緑の党の人気が高く、今回の選挙ではSPOが過去最低の議席数をさらに下回った。また傾向として、州の東側の全ての市では投票率は50%を上回り、かつOVPが勝利した。しかし、左派が強い州都ブレゲンツや、州人口の多くが住む西側地域では投票率が50%を下回った。

【出典】
オーストリア連邦省ウェブサイトほか
http://www.austria.gv.at/site/infodate__21.09.2009/6632/default.aspx#id36599
http://welections.wordpress.com/2009/09/21/vorarlberg-austria/


ウィーンが生活の質調査で世界トップに

2009年08月17日 

 インターナショナル・マーサー・コンサルティング・グループの生活の質調査によると、ウィーンが総合点で初めて首位に輝いた。
 この調査は世界215都市を対象にしており、ニューヨークを100点とした相対的点数評価が行われる。治安、医療、教育、交通に合わせて、政治、社会、経済、環境等の国際的業務を課されるビジネスマンにとって重要な39分野の要素について点数評価が行われる。ウィーンは常に上位に位置し、昨年はチューリッヒに次ぐ2位を獲得していたが、今年は108.6点を獲得し首位となった。

 マーサーのSlagin Parakatil上席調査員は今年の調査について以下のようなコメントをしている。
 「昨今の金融危機の結果、多国籍企業はコスト削減の観点から自社の国際戦略を見直している。今後も生活の質に基づいた職員への海外手当は重要な要素であろうが、多くの企業は、可能な限り長期的な海外業務の数を減らしたり、海外で行っていた給与支払い業務を国内業務に戻したりしている。」

【出典】
http://www.mercer.com/qualityofliving
http://www.wien.gv.at/english/news/mercer-study.html


金融危機のオーストリアでの影響等

2009年03月12日 

 オーストリア国内での失業率が急上昇している。これまで5%前後で推移していた失業率は、2009年の1月末の時点で8.3%まで上昇した。
 これは先月比の12.2%増となり、国内では301,529人が失業者として登録されている。この傾向は特に若い世代で顕著であり、若年労働層の22.9%が失業状態にある。
 これまでプラス成長を続けてきた国内経済も、8年ぶりとなるマイナス成長が見込まれている。国内需要の減少と、輸出相手国内の需要の減少を理由として急激に輸出額が落ち込んだ結果として、オーストリア国内の経済調査機関「WIFO(オーストリア経済調査研究所)」の調査では、2009年のGDPは0.5%のマイナス成長となる見込み(2008年12月時点での発表)、また1月19日に発表された欧州委員会の調査結果によると、前年度比でマイナス1.2%となる見込みということである。

【出典】
オーストリア連邦政府ウェブサイト
http://www.bka.gv.at/site/6632/default.aspx#id33669
在オーストリア日本国大使館
http://www.at.emb-japan.go.jp/jp/index.html

【参考】
CIA The World Factbook https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/
Budapest Business Journal
http://bbjonline.hu/
WIFO(オーストリア経済調査研究所)
http://www.wifo.ac.at/


郵便局閉鎖の延期措置が実施される

2009年01月15日 

 11月11日、現オーストリア設備大臣(Minister of Infrastructure)であるウェルナー・フェイマン大臣は、2009年の6月まで国内の郵便局を閉鎖してはならないとの布告を発表した。(なおフェイマン大臣は、2008年12月にオーストリア連邦首相に就任した。)
 オーストリアの郵便サービスは「オーストリア郵便」(Österreichische Post AG)によって運営されている。同社は2006年に民営化されているが、現在でも国が株式の約50%を所有している。昨今はEU内の規制緩和に伴う郵便事業の自由化が進んでいるため、同社は国際競争力を増すために、採算が取れない地方の郵便局を中心に、国内に1,300件ある郵便局の900~1,000件を閉鎖し、9,000人の職員を解雇する予定であると発表した。

 なお、あくまでも今回の布告は緊急措置であり、郵便局の閉鎖が延期されるにすぎない。これと同様の問題は同じく半民営企業のテレコム・オーストリア(Telekom Austria)でも起きており、同社は2011年までに2,500人の解雇を予定している。

【出典】
オーストリア連邦政府ウェブサイト
http://www.bka.gv.at/site/5923/default.aspx#id32639
ロイター
http://www.reuters.com/article/rbssAirFreightCourierServices/idUSLB42949320081111


オーストリア国民議会選挙が行われる

2008年11月25日 

 9月28日、オーストリア国民議会の下院選挙が実施された。
 内務省が発表した速報結果によると、最大政党である社会民主党(Social Democratic Party for Austria)が得票率29.4%で最大、オーストリア国民党(Austrian People’s Party)が26.0%と1、2位を維持してはいるが、極右政党と見られている自由党(Freedom Party)が17.7%、オーストリア未来同盟(Alliance for the Future of Austria)が10.8%と大幅に議席を拡大した。なお、緑の党(Greens)は10.1%と、僅かに票を失っている。
 社会民主党と連立を組んでいたオーストリア国民党は、社会民主党が進める税制改革に同意できないことを理由に連立を解消している。現状では各党とも単独与党となれないため、今後どのような形で連立が形成されるか注目を集めている。
 今回の選挙では、EU諸国で初めて16-17歳の若年層が投票に参加した。約200万人となる若年層は、オーストリア全有権者6,300万人中でも比較的大きな位置を占めている。さらに今回は、国外居住者を含むオーストリア国民にとって初めての試みとなる郵便投票が実施されている。有権者は電話、郵送、FAX、インターネット等で郵送用の投票用紙を申請することができ、選挙管理委員会もしくは在外公館まで専用の封筒で宣誓書と共に郵送する。郵便投票の結果は今後徐々に集計に加えられることとなるが、今回の選挙では、郵便投票が全投票数の約10%を占めている。

【出典】
オーストリア連邦政府ウェブサイト
http://www.bka.gv.at/site/5923/default.aspx#id31786
BBCウェブサイト
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7639805.stm


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