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ADレポート「オランダの自治体における気候変動対策のための広告規制」

2022年09月08日 

近年、オランダの自治体において、気候変動対策の観点から、環境負荷の大きい製品・サービスの広告を禁止する動きが見られる。以下において、アムステルダム市とハールレム市での事例を簡単に紹介する。

(1)アムステルダム市

アムステルダム市(人口約87万人)は、基準年である1990年比で、2030年に市のCO2排出量を55%、2050年に95%削減することを目指している。そのターゲットに至る過程で、市の組織全体として2030年までに温室効果ガスの排出をゼロとし、さらに、早ければ2030年にはすべての交通分野においても同様に排出ゼロとすることを目指している。また、2040年には、天然ガスの使用を中止するという計画としており、現在その実現に向けた各種施策に取り組んでいる。

その方針に沿う形で、2021年5月、アムステルダム市議会において、市内地下鉄内での広告掲載に関して、ガソリン車(レンタカー含む)や航空券など温室効果ガスを大量に排出する航空・化石燃料産業の製品・サービスの広告を禁止することが議決された。この決定は、週 400 万人の乗客が閲覧する可能性があるとされる何百台もの大型スクリーンから、これらの広告が排除されることを意味する。

(2)ハールレム市(Haarlem)

国連によると、家畜は(メタンを含む)温室効果ガスの14%以上を生成しているとされており、近年、肉食が地球環境に非常に大きな影響を与えていることが広く認識されるようになってきた。

そのような状況の中、2022年9月、オランダ西部の都市ハールレム市(人口約16万人)において、2024年から、バスや公の場にある大型スクリーンなどおいて、食肉に関する広告を禁止することが世界で初めて決定されたことが非常に大きな話題を呼んでいる。これは、GroenLinks党(緑の左派党)の議員からの提案によるものである。

 

上記の2事例において、このような方針に反対する意見もあり、例えばアムステルダム市議会においては、「言論の自由を抑圧しているのではないか」という一部市議会議員からの反対意見や、ハールレム市の議決については食肉業界から「行き過ぎている」との反発が出ているとの報道もある。

各自治体において、気候変動対策を喫緊の課題と捉え、急速な社会変革に向けて舵を切っている動きがみられる中、自治体が具体の施策を実行に移す際には、市民や影響を受ける業界団体など様々なステークホルダーとの摩擦が増えていくことも多くなる可能性があると思われる。

 

所長補佐 西川

 

出所:
https://www.amsterdam.nl/en/policy/sustainability/policy-climate-neutrality/#:~:text=The%20city%20will%20move%20over,be%20climate%20neutral%20by%202030.
https://theworld.org/stories/2021-05-13/amsterdam-bans-fossil-fuel-ads-its-metro
https://www.fao.org/news/story/en/item/197623/icode/
https://www.bbc.co.uk/news/world-europe-62810867
https://www.dutchnews.nl/news/2022/09/haarlem-first-city-to-ban-ads-for-meat-in-public-spaces/
https://www.theguardian.com/world/2022/sep/06/haarlem-netherlands-bans-meat-adverts-public-spaces-climate-crisis

 

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