Amazonは、2021年3月4日にはイーリング、16日にはウェンブレーと、ロンドン郊外へ2店舗のAmazonフレッシュをオープンした。アメリカでは既に「Amazon Go」という名前で同様の店舗を24か所でオープンしているが、イギリスではこの2店舗が最初となる。
Amazonフレッシュの店舗は、一言で言うとレジの無いスーパーマーケットだ。カメラやセンサー、ディープラーニングなど最新のテクノロジーを駆使し、客が手に取ったり戻したりしたものを把握することができ、レジに並んで支払いを行うことなく、そのまま店外へ歩いて出ると後からAmazonへ登録しているカードで決済されるようになっている。
日本でも無人店舗やレジなし店舗が現れ始めているが、筆者は体験したことがなかったこともあり、3月末の週末に、ロンドンの東部、日本人も多く暮らすイーリングにできたAmazonフレッシュを訪れてみた。
ショッピングセンターの入り口に位置しているが、まだコロナ対策のため周囲の店舗が開いていないこともあってか、店の外には数人並んでいる程度であった。
店内での流れをご紹介したい。
店舗へ入る前に、Amazonのアプリをダウンロードし、自分のアカウントでログインしておく必要がある。アプリ内のAmazonフレッシュ用のQRコードを用意し、店舗の入り口のゲートにかざす。するとゲートが開き、店内へ入ることができる。まだ慣れていない人も多いためか、店外に一人、ゲート横に一人店員が配置されており、アプリが必要なことを説明したり、操作のサポートをしていた。
一旦入ってしまえば、中は通常のスーパーマーケットと何ら変わりない。生鮮食品やレトルト食品、生活必需品などが並んでいる。酒類を販売しているコーナーの入り口にも店員が配置されており、未成年と思われる客には声を掛けるものと思われる。また、日本のコンビニにあるようなコーヒーマシーンも用意されており、こちらもその場では支払いをすることなくコーヒーをカップに注ぐことができる。
そして、店舗から出る際は、出口用のゲートからそのまま出るだけである。
その後、Amazonのアプリを確認すると、確かに購入履歴にその日購入したものが並んでおり、夜にはデビットカードから代金が引き落とされていた。
このシステムを導入するには相当の費用が掛かるであろうということは想像に難くないが、このシステムが普及し、1店舗あたりにかかるコストが下がれば、レジにかける人件費の削減や、そこに並ぶ顧客の時間やストレスの軽減、万引きの防止など、メリットは多いと考えられる。
一方で、アプリやアカウントの登録が無いと買い物ができないという状況は、スマートフォンやカードの利用に慣れていない人にとっては大きなハードルとなるだろう。
また、このようなレジを通らずに自動的に決済が行われる形のシステムでは、事前の決済方法の登録が必須となるため、Amazonのような多くの人がアカウントを取得して日頃からカードで支払いを行っているサービスが母体となっていることは大きな強みであると考えられる。
今回、体験してみて最も感じたのは、店内でかばんの中に商品を入れ、レジを通らずにそのまま外にでる居心地の悪さである。かばんに入れたものはきちんと把握され、後から請求されるとわかっていても、なんだかいけないことをしているような気分になってしまった。
近い将来、レジを通らずに店を出ることが当然となる日がやって来るのだろうか。
(2021年4月 所長補佐 金子)