英国に赴任してからしばらく経過し、心なしか喉や鼻に不調を感じることが多くなった気がしていました。田舎町出身の筆者には大都会ロンドンの空気は合わないのだろうかなどと思いを巡らせていましたが、どうやら感覚的な話ではなく確かにロンドンの空気は好ましくない状況にあるようです。
大気汚染はロンドンにとって喫緊の課題であり、その改善に向けて超低排出規制区域(Ultra Low Emission Zone。以下、「ULEZ」という。)を導入するなど対策を講じてきたところです。2023年8月29日、大気汚染のさらなる改善に向けて、このULEZの範囲が拡大されました。
ULEZは、大気汚染の改善を目的として2019年4月に導入された制度で、一定の排出基準を満たさない車両で規制範囲内を通行する場合、1日あたり12.50ユーロ(約2,300円)が課されるというものです。2019年の導入当初はロンドン中心部のみが対象範囲でしたが、2021年10月には周辺部に拡大され、この度ロンドン市内全域まで拡大されることとなりました。
調査会社であるYouGovが実施した調査によれば、ULEZの範囲拡大についてロンドン市民の47%が賛成、42%が反対しているといいます。興味深いのが、ロンドン中心部の住民と郊外の住民で傾向が異なる点です。前者は賛成62%、反対26%で賛成意見が多い一方、後者の場合は賛成38%、反対51%と反対意見が多数という結果になりました。これについてYouGovは、中心部住民の大多数が既に従来のULEZ内に居住している上、自動車保有率も低いことから、拡大の影響が小さいためであると分析しています。
賛否両論がある中で講じられた今回の範囲拡大。取り組みの成果のみならず、今後の住民生活への影響も注目されます。
詳細はこちら:https://www.jlgc.org.uk/jp/ad_report/ultralowemissionzone/
ロンドン事務所 所長補佐 中込