英国をはじめとするヨーロッパで、健康への害を示す警告文および真っ黒い肺や腫瘍など喫煙により引き起こされた実際の病気の写真が表示されたタバコのパッケージを目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。英国では、タバコのパッケージにこのような警告文や写真を表示することが義務付けられています。英国保健省が2021年4月に発行した「Tobacco packaging guidance」によると、タバコのパッケージは標準化された仕様(パッケージの色(光沢のないこげ茶色)、商品名の記載位置・フォント・文字の大きさ、健康上の警告の表示等)を満たさなければいけないとされています。
英国の隣国であるアイルランドでは、このような「健康への害を示す警告表示」の考え方をお酒にも取り入れようとする動きが出てきました。
2023年5月22日、アイルランドでは、すべてのアルコール製品において、アルコール摂取による肝臓病やがんのリスクをラベルに目立つように記載するよう義務付ける法律を制定しました。また、お酒のカロリー等についても記載が義務付けられることになります。この法律は3年後の2026年5月22日から適用される予定です。
今回のアイルランドの決定に対し、専門家は、多くの常飲者がアルコール摂取の危険性を知らないままであるとし、正しい方向への第一歩であると支持しています。一方で、イタリアやスペインなどのワイン生産国、EU加盟6カ国、そしてアイルランド国内の業界関係者は、アイルランド政府の決定を批判しています。
ウイスキーや黒ビールの聖地と呼ばれるように、アイルランドには数多くの伝統的な蒸留所・醸造所があります。このようなアルコール飲料業界の関係者を守りながら、飲酒による肝臓病やがんの罹患率を低減していくことができるか、注視していきたいと思います。
詳細については、こちらのレポートをご覧ください。
ロンドン事務所 所長補佐 西田