コロナはいまだに終息していない。
英国では、現在はコロナの感染拡大防止のための行動制限は何もないが、過去に3度のロックダウンが行われた。
2020年3月23日に宣言された1回目のロックダウン時は、トイレットペーパーの買い占めや、スーパーの宅配サービスがすぐに埋まってしまい予約できないなど混乱をきたしていたと聞いている。そのような中で、ロンドン郊外に住む知人の地区では、住民が自主的に買い物支援を行うなど相互支援が始まったと聞いた。
コロナ以前は、ロンドンに通勤する人が多く住むベッドタウンであり住民同士の交流は活発ではなかったにもかかわらず、どのようにして地域の交流が始まったのか、知人から聞いた話を紹介する。
相互支援の発端とシステム
この地区ではもともと一部の住民がご近所SNS(交流サイト)アプリNextdoorで繋がっており、ロックダウンにより地域の人々が孤立してしまう可能性があることに危機感を覚えたことがきっかけで議論が始まった。
その議論の末に生まれた対策は、各通りの中から1人がコーディネーターとなり、支援者と、支援を必要としている人(主に買い物支援)との調整を行うというものであった。
この地域は100の通りがあったが、コーディネーターの役割を担う住民の数は徐々に増えていった。
コーディネーターを担うにあたっては、DBSチェック(Disclosure and Barring Service) という「無犯罪証明書」 (英国では、子どもを持つ親は学校から必要とされる書類であるため、持っている)により本人確認を行った。時には、パスポートや運転免許証により本人確認を行うこともあった。
支援活動の輪を広げるために行ったこと
Facebook で地区の住民のみが参加できるグループをつくり、ボランティア団体が創設した相互支援のウェブサイト(COVID-19 Mutual Aid)にて周知を図っていたが、ソーシャルメディアを使っていない住民(主に高齢者)が支援の対象から漏れることがないように、リーフレットを全戸に配布し、電話で連絡をとれるようにした。
その際、地域住民をよく知る地区の議員の協力も得ることができたため、効率的にリーフレットを配布することができた。
Facebookの運用で留意したこと
Facebbookにおける住民のグループの運用にあたっては、 地域住民であることを確認した上でグループへの参加を承認するようにした。(近親者はグループへの参加が認められた。)
また、 支援グループのポリシーを守るため、 商品やサービスの宣伝の禁止、ヘイトスピーチの禁止、公的機関以外によるコロナに関する情報提供の禁止などを含む方針を定めて周知した。その上で、この方針に沿わない投稿については、削除することも明記してFacebookの管理を行った。
所感
英国では、コロナ禍の下、買い物や処方箋の受取などに行けない人々を支援するために、4000以上もの相互支援グループが発足したとされる。
また、ある分析によれば、2020年3月のロックダウンを契機として結成されたFacebookによる相互支援のグループの41パーセントは、ロックダウンが終わってからも活動を継続していることが分かっている。当初は、スーパーの買い物の代行や薬の受取の代行をしていたが、現在は物価急上昇に伴う生活費の高騰化に対応するため、フードバンクの運営、募金活動等をしている。また、アフガニスタンやウクライナからの難民のために住まいの提供や募金活動を行う団体もある。
英国滞在期間中に感じたことは、英国では生活物資の支援や募金などのチャリティ活動が盛んであるということだ。
特にコロナ禍では、そのようなチャリティ活動がニュースで報じられるたびに、他者のために自主的に活動する英国人の強さと優しさに胸を打たれた。英国の人々のこのような高い自主性に基づく行動力からは学ぶことが多い。
所長補佐 萩ノ脇
参照