ロンドンの街中を歩いていると、シェアサイクルに乗る人をよく見かける。新型コロナウイルス感染対策としても自転車の利用が推進されている。ここでは、観光にも通勤にも活用されているシェアサイクルを運営する2社のサービスについてご紹介する。
◆ロンドン市交通局の運営するSantander Cycles
運営しているロンドン市交通局はロンドン市内の鉄道、地下鉄、バスなど主要な交通機関を運営するほか、主要道路の管理などロンドンの交通網を一手に担っており、Santander Cyclesもその一つだ。Santanderという銀行が現在スポンサーとなっているため、「Santander Cycles」と名付けられている。
Santander Cyclesは、自転車の数11,500台以上、ドッキングステーションの数750か所以上を誇るロンドン市内最大のシェアサイクルサービスである。料金、使用方法は下記の通り。
【料金】
- 24時間2ポンド(≒280円)
- 年間90ポンド(≒12,600円)
共に1回30分までであれば回数制限なし(30分を超えるごとに2ポンドの追加料金)
【借り方】
- 専用アプリまたはドッキングステーション横の機械で暗証番号を発行
- ラックに付いているボタンで番号を入力し、ロック解除後利用
- 返却時は空いているラックへ戻す
アプリを利用しない場合は会員登録不要で、支払いに用いるクレジットカードまたはデビットカードが再度借りる際の本人確認となる。
ロードバイクで自動車と一緒に走り抜ける人も多い中、いわゆる“ママチャリ”であるSantander Cycleの自転車では余りスピードが出ず、ロードバイクや自動車に追い越されながら走ることになる。
◆もうひとつのシェアサイクル“Lime”
電動スクーター(キックボードの電動版)のシェア事業を世界中で展開しているLimeは、ロンドン市内では電動自転車のシェアサービスを行っている。
【料金】(写真にある自転車の場合)
- 1回1ポンド(≒140円)+1分ごとに15ポンド(≒21円)
- 24時間99ポンド(≒1679円)、1回30分までであれば回数制限なし(30分を超えると1分ごとに0.15ポンド(≒21円)の追加料金)
- 1か月99ポンド(≒1259円)+1分ごとに0.15ポンド(≒21円)
【借り方】
- 専用アプリを使用し近くに止めてある自転車を予約
- 自転車に記載してあるQRコードをアプリで読み込み開錠し利用
- 返却時は邪魔にならない場所へ駐輪し、施錠する
電動自転車であることもあり、坂道でも楽に走ることができるが、料金はSantander Cyclesよりも高額である。30分使用した場合には、5.5ポンド(≒770円)必要だ。
また、LimeはSantander Cyclesとは異なりポートレス型のため、利用者は公園内など禁止されている箇所でなければどこでも返却処理を行うことができる。通行の邪魔にならない場所へ駐輪するように決められているが、歩道の真ん中などに駐輪されているのを見かけることもあり、安全性や景観の維持の観点での難しさを感じる。
自転車にはGPS装置が取り付けられているため、定期的に充電や整備が行われている。
ロンドンでは自転車は歩道を通行することができないため、シェアサイクルを利用する場合にも自動車と並走することとなる。シェアサイクルであってもヘルメットを着用したり、Hi-Vizと呼ばれる蛍光色のベストや上着を着て事故から身を守る対策をしている人も少なくない。また、基本的に自動車と同じルールで走行する必要があるため、一方通行の多いロンドン市内では事前にルートを確認しておかないと、思うところにたどり着けず、歩道を押して歩くことになることもある。
一方で、新型コロナウイルス対策で公共交通機関の利用を減らすために新たな自転車道の整備なども日々進んでいる。また、天候が不安定なロンドンでは天気に合わせて地下鉄やバスとシェアサイクルを使い分けることができるメリットは大きく、GoogleマップやCitymapperといった地図アプリで経路検索をする際にも、交通手段の一つとしてこれらシェアサイクルが提案されるなど、ロンドン市民には無くてはならない交通手段となっている。
(2020.12 所長補佐 金子)