【記事】イギリスのクリスマス
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今回は、イギリスの数あるクリスマス文化から、2つ取り上げてご紹介します。
◆「サンタクロース」はパイがお好き?
イギリスでは、サンタクロースのことをファーザー・クリスマスとも呼びます。
実はこの二人は元々全くの別人で、ファーザー・クリスマスは緑色のフード付
きのコートを着て、イギリスの長い冬に春の訪れを告げる象徴でした。時代と
ともに形を変え、20世紀に入るとアメリカの飲料メーカーのクリスマスキャン
ペーンにより「赤い服を着たサンタクロース」が定着し、現在ではこの二人の
名は同じ人物を指すこととなりました。
とはいえ、元々別の人物ですから異なる面もあります。ファーザー・クリスマ
スはイギリスの伝統的な菓子・ミンスパイ(ドライフルーツの詰まった小さな
タルト)が大好物とされており、子どもたちは今でもイブの夜に、ミンスパイ
とブランデーを暖炉の前に置いておきます。英国貨物運輸協会によれば、クリ
スマスイブには毎年700万個ものミンスパイが消費されているそうです。
◆クリスマスにもワーク・ライフ・バランスを!
色とりどりのオーナメントやギフトが売られるクリスマスショップは見ている
だけでも楽しいものですが、高級百貨店ハロッズでは、なんと8月上旬からク
リスマスショップがオープンしていました。実は、Pricewaterhouse Coopersの
調査によれば、一人あたりのクリスマス消費が主要経済国の中で最も高いのは
イギリス(1,065米ドル)で、アメリカ(776米ドル)を大きく引き離していま
す(2014年発表)。
一方、クリスマス当日は、ロンドン市内では24日の夕方頃から続々とレストラ
ンやパブ、ショッピングモールなどの営業が終わり、25日にはホテルなどを除
くほとんどの機能がストップします。驚いたことに、公共交通機関も例外では
なく、バス、地下鉄は始発から全線運休、タクシーは利用可能ですが、追加料
金(4ポンド=約600円)がかかります。
観光客にとっては不便極まりないイギリスのクリスマスですが、誰もが少しの
不便さを甘受しながら、社会全体で「ワーク・ライフ・バランス」を体現して
いるところに、私達も学ぶべきところがあるように思いました。
(ロンドン事務所所長補佐 高桑)