2011年7月31日から8月1日にスコットランドにおいてエネルギー政策に関する調査を行いましたので、下記のとおり概要を報告します。
1 ホワイトリー風力発電所(グラスゴー郊外)
ホワイトリー風力発電所は、2008年にグラスゴー郊外にオープンした風力発電所である。デンマークの風力発電所に次ぎ、ヨーロッパで2番目に大きい規模を誇る。
現在、敷地内に風力発電機(タービン)が140基あり、これから75基増設する予定(追加設置の点検ため、訪問時は風力発電機が稼働していなかった。)グラスゴー周辺の18万戸に電力を供給している。
スコットランド政府は、2020年までにスコットランドの発電量に占める再生可能エネルギー比値を、100%にする目標を立てており、2011年現在の計画(目標値)は31%で、再生可能エネルギーによる発電の内訳は50%強が風力、その他は水力とバイオマス等である。風力のよる発電が一番増えている。
周辺住民からは、風力発電所の建設にそれほど大きな反対はなかった。ビジターセンター(毎日営業)には、展示や売店、カフェがあり、敷地内のバスツアーを催行するほか、学校からの見学を受け入れ、地域住民や子どもたちの教育の場となっている。
2 ペラミス・ウェーブ・パワー社(エディンバラ郊外)
同社は、波力発電装置の設計製作、販売会社。1998年創業。装置は、大量生産の段階になく受注生産である。
E-on UK社のために製作しているP2波力発電装置を見学した。5つの部分を連結して全長180m、各部分の重さは9トン。数週間後に作業が完了し、スコットランド北部のオークニー諸島に運ばれ、試行される予定である。Scottish Power Renewable社からの受注も受けており、スコットランド北部で試行の段階である。
3 スコットランド政府(エディンバラ市)
スコットランド政府は、2020年までに100%再生可能エネルギーで賄うという目標を掲げて実現に向けた取組を行っている。電気需要の100%すべてを再生可能エネルギーのみ賄うのではなく、安定した電力供給のための予備として火力発電所は残すつもりである。
スコットランド政府は、同時に2020年までに1990年比で42%の二酸化炭素の削減も目指している。英国全体では、1990年比34%の削減、EU全体では20%削減で、スコットランドはそれより高い目標である。
スコットランド政府が英国、EUの目標より高い目標を設定し、風力をはじめ波力、潮力という再生可能エネルギー技術の開発を推進・支援しているのは、これがスコットランド経済成長のカギであると考えているからである。スコットランドには、北海油田(アバディーン周辺)開発の技術があり、再生可能エネルギーの研究開発にも活かしている。
スコットランドがアレックス・サモンド首相のリーダーシップに基づいてエネルギー政策を積極的に推し進めているのは、ブレア首相の分権改革を経て1999年7月にスコットランド議会が設置されたことも大きな要因である。議会が設置されていなければ、このような計画は実行に移せていなかった。ここ数年で環境や再生可能エネルギーに関する住民の意識も変化してきた。今後は、風力や波力、潮力発電のコスト削減を進めていきたい。