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調査・研究

スピーカーシリーズ

社会におけるセキュリティ日英比較

2009年02月23日 

●日時 2009年2月23日(月)14:00~15:30
●講師 セコムPLC Managing Director 竹澤稔様
●会場 (財)自治体国際化協会ロンドン事務所会議室

090223

ご講演要旨

【英国におけるセキュリティ事情】
・英国の人口あたりの犯罪数は日本の5~6倍。
・英国のセキュリティ対策の歴史は長く、アメリカとともに世界で最も進んでいる国の一つ。
・CCTVは、世界に設置されている約4300万台のうち、一割が英国に設置されていると言われ、ロンドンを1日散歩すると300回はCCTVに撮影されることになる。一方で、CCTVによる犯罪の検挙率はストリート犯罪の約3%に止まり、警察も些細な事件ではCCTVを確認することはしないため、犯罪抑止効果が必ずしも大きいとはいえない。

【日英のセキュリティ会社の違い:英国モデル】
・日英のセキュリティ会社の大きな違いは、英国のセキュリティ会社が防犯機器を販売する“防犯機器販売設置業者”であるのに対し、日本のセキュリティ会社は“防犯サービス提供者”であることである。
・英国では、街中で防犯装置が鳴りっぱなしという光景をよく目にするが、防犯機器を販売した後、セキュリティ会社の役割は限定的であり、アラームが鳴ったらコールセンターから顧客と警察に連絡するだけで、自ら現場に駆けつけることはしない。
・防犯機器自体の性能等について規制する多くの機関が存在するものの、セキュリティ会社をサービス提供者としては捕らえていない。
・セキュリティ会社による十分なチェックなしに警察に通報されるため、誤報は90%に及び、市民の血税が誤報に費やされていることが社会問題化している。
・警察側もこのような事態を防ぐため、同一物件に対し年間3回の誤報があったらそれ以上出動しない、警察への通報には2種類以上の警報機の作動を条件とするなど、通報ルールを厳格化している。
・この英国モデルの背景には、1880年に初の防犯アラームが発明されて以来、商品としての防犯アラームが早い時期から市民に実用されてきたという歴史的背景による。
・警察が防犯アラームに対応して出動するようになり、防犯機器の販売者、防犯機器を規制する様々な機関、そして防犯機器に対応して出動する警察の構造が固定化されてしまった。しかし、1989年には誤報の数はピークの120万件にのぼり、警察はもはや全てのアラームには対応できないという状況となったわけである。

【日英のセキュリティ会社の違い:日本(セコム)モデル】
・一方、日本の警備会社においては、アラーム機器は販売ではなくレンタルされ、現場確認された実犯罪のみが警察通報されるため、誤報によって警察が振り回されるということが少ない。
・“防犯機器の販売”を主とする英国モデルに比べ、“安全サービスを提供”する日本モデル(セコムモデル)は、台湾や韓国などでは標準モデルとなっている。
・日本モデルが日本及び他のアジア諸国で定着するようになったのは、まさしくセコムがこの形態でセキュリティ・サービスを始めたからである。
・セコムは、1962年日本初のセキュリティ会社としてパトロール・サービスを開始し、1964年の東京オリンピックによる警備需要、1965年にセコムをモデルとしたドラマ「ザ・ガードマン」が放映されたことにより、急成長をとげた。人的資源のみによる警備から、よりシームレスな警備を目指し、防犯装置・ネットワーク・人間の機動力の融合による機械警備体制への転換を図った。
・各都道府県にコントロールセンターを配置し、クオリティ・サービス・プロバイダーとしての事業モデルを確立した。
・契約件数は国内外合わせて180万件(国内120万件、海外60万件)、海外においても11カ国において事業を展開している。
・現在では、自社のネットワークを活かし、セキュリティ・サービスの他、メディカル、保険、地理情報、防災、老人ホーム、データ・センター、PFI刑務所などのサービスも提供している。

【英国でのクオリティ・サービスの提供】
・セコムPLCの英国進出は、1991年のCarroll Security社の買収に始まる。厳しい経営状況が続く中、2001年より日本から社長を派遣。
・サービスレベルの低さが当たり前とされる英国市場で日本水準のクオリティ・サービスを提供すれば成功するのではという発想から、2003年から事業改革プラン“QSP programme ”を開始。英国モデルに基づく機器販売設置会社から脱却し、日本モデルである質の高いサービス提供会社への転換を図った。
・英国内に25の事業所があり、約600名の社員を抱えるが、日本本社から派遣された社員は社長(Managing Director)1人のみである。
・このような状況のもと、いかにしてクオリティ・サービス・プロバイダーとしての企業理念を社員に植え付け、企業文化を転換するかに力点を置いてきた。
・社内での表彰制度や、優良なケース・スタディの社内報による共有、日本のサービス現場を学ぶための集中研修プログラム(ジャパン・スタディー・ツアー)の開催等、社員教育を着実に行ってきた。
・顧客のクレームに責任を持って対応することで自社のファンを増やすチャンスに変え、現在では、大規模な民間小売業者のみならず、国やNHSなどのパブリックセクター、さらにヒースロー空港(ターミナル5)やセント・パンクラスなど英国の玄関においてロンドン警視庁からの大型受注も受けている。
・ロンドン警視庁からのMetropolitan Police Award for False Alarm Reductionの受賞など、多くの機関からの表彰も受け、クオリティー・ブランドの確立と、企業文化の変革を着実に進めている。
・今後は、英国セキュリティ業界における相対的優位に満足するのではなく、サービスレベルのさらなる向上を目指して絶対的優位を確立することを目標としている。

(以上)

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