活動記録
2012年08月02日
LGA (Local Government Association, 自治体協議会)の年次総会に出席しました。
去る6月26日~28日にかけて開催されたLGA年次総会(Annual Conference)に、当事務所から所長の羽生及びキルヒナー主任調査員の2名が出席しました。当事務所にとって例年の行事ではありますが、羽生にとっては初参加でしたので、日本の同種の会議との違いを中心に、印象に残った点をレポートします。
LGA(Local Government Association)は、イングランドの自治体とウェールズ自治体協議会を構成メンバーとし、国政との間でその利益を代表し自治体の活動を支えている、日本の地方六団体の集合体に当たる組織であり、以前から設置されていたイングランドの基礎自治体、広域自治体、都市部の一層制自治体のそれぞれの代表組織が合併して1997年に創設されています。
(注-LGAについては、同団体が重視する活動の一つである地方の経済成長キャンペーンの内容を含めて当事務所マンスリートピックス2012年6月号でも詳しくご紹介しておりますのでご覧ください。
http://www.jlgc.org.uk/jp/information/monthly/uk_june_02.pdf
[LGA総会の特徴-意見交換、政策議論の場]
3日間にわたる会合は、いくつかのPlenary Session(全体会合)と多くのWorkshop(ワークショップ、分科会)やFringe Session(小規模会合)からなり、議員や大学教員、シンクタンク関係者、マスコミ関係者(編集者、記者等)が参加します。
全体会合もワークショップ・分科会も、基本は1名~数名のスピーカー(発表者)が意見や取り組み事例を述べ、その後に参加者との質疑応答が行われるという流れです。各自治体からの職員はCEO(事務総長)や部長クラスも来ていましたが、感触では半数以上が広域自治体であるカウンティや基礎自治体であるディストリクトの議会の議員であり、発表者の多くも議員で、司会などもテーマによっては学者が、多くは議員自身が務めていました。
筆者(羽生)は日本の全国知事会議にはこれまでの職歴の中でかなりの回数出席した経験がありますが、知事会議を含む日本の地方六団体の会議はどちらかというと組織としての決定や政府への提案・要望を取りまとめることに力点を置いていると思います。
一方、LGA総会は、一部には組織の決定事項を審議する場もありますが、互いの意見交換や政策を学びあうところに力点が置かれていると感じました。参加者は自治体関係者だけでなく、大学、マスコミ、シンクタンク等の関係者が含まれており、むしろ日本の様々な自治関係学会に似た面もあります。
また、面白い点として、お互いの政治的立場の違いも鮮明に出しており、夕刻などには政党毎のセッション(会合)も開かれていました。政策提案や要望についての決定を日本のように多岐にわたって行うことをしないのは、政治的にも超党派で一致をみるのが難しい事柄が多いせいもあるかもしれません。さらに、自治体関連のサービスを提供する企業が様々なブースを設置し、昼休みや夕方には一生懸命宣伝も行っていたのも民間へのアウトソーシングを積極的に行っている英国らしいと感じました。
[厳しい財政状況が議論の内容にも反映]
2010年5月の保守党・自民党による連立政権発足後、リーマンショック後の経済低迷等もあって財政緊縮策が取られており、特に自主財源に乏しい英国の自治体では補助金の削減等によって非常に厳しい財政運営が続いています。このため多くのテーマが厳しい財政状況との関わりをテーマとしたものになっていました。
消防のような分野も例外ではありません。“Future Funding of the Fire Service”(消防行政の今後の財源)というセッションには、日本の消防広域化と類似した議論が行われるのではと関心を持ち参加しました。一部に、消防組織の合併を進めた例が紹介されましたが、この例も含めて基本的には人員削減や勤務シフトの見直し、消防署の廃止・統合など、もっぱら収支を合わせるための効率化をどうやったら実現できるかという苦しい議論となっていました。終了後出席者の一部とは、消防の高度化や少子高齢化によるニーズの多様化などを念頭に積極的・戦略的な広域化を進めてきた日本の状況も参考にしていただけたら、との話をしました。
このような中で、影の財務大臣である労働党のエド・ボールズ下院議員が全体会合の一つでスピーカーに呼ばれ、発言が注目されました。連立政権の経済政策を批判し「我々はお金の使い道を変えてみせる」とは言ったものの、「地方の財政的苦境は今後も続く」と現実的な発言をしていたことも自治体の苦境を象徴していると感じました。
[自治体のマグナ・カルタを]
3年後の2015年は、成文憲法を持たない英国にとって重要な位置づけを持つマグナ・カルタの制定(1215年)から800周年に当たります。意外に思われる方もいらっしゃるかと思いますが、英国では日本の地方自治法に当たるような法律もないため、自治体の権限やその制度的な保障は日本と比べても極めて弱いというのが実情です。
「自治体のマグナ・カルタを」と題したワークショップでは、こうした実情を打開するため、国王の権限にも限界があることを示したマグナ・カルタの800周年に向けて地方自治の制度保障や国と地方の関係を法制度として明確化することの必要性が議論されました。スピーカーには、保守党、自民党、無所属の地方議員に加え、英国議会下院でこの問題を所管する政治・憲法改革特別委員会のグラハム・アレン委員長(労働党)が参加していました。同委員会は既に地方自治の保障や国と地方の関係の法制化の案文も提案しており、今年後半には最終報告がまとめられる予定になっています。セッションの結果、下院委員会と連携しながら、今後も議論を継続していくことが出席者の間では確認されていました。
セッションを傍聴していた地方自治・コミュニティ省のクラーク副大臣(地方分権担当)も発言を求められ、婉曲な表現ながらもこうした動きへの支持を表明していました。
ただ、LGAとして法案にどのように対応していくのかは、現時点でははっきり決まっていません。自治体の自由を求める一方で、法律にその内容が記載されることに伴う制約も懸念されるというのが慎重派の理由のようです。
筆者自身、日本では憲法による地方自治の保障、地方自治法は所与の存在と考えてしまいがちで、むしろ全国知事会の仕事に関わっていた当時などは、霞ヶ関との様々なやりとりの中で、制度の保障がありながら、うまく活用されていないと思う場面も多かったのですが、今回のセッションに参加してみて、制度的基盤があることのありがたみを改めて実感させられました。しかも日本では、昨年春には国と地方の協議の場に関する法律が制定され、地方の立場は着実に強化されると同時に、地方六団体は責任ある主体としての役割を負うことになりました。このような制度は民主主義先進国の中でも貴重なものであり、着実な実績を積んでいくことで、日本の取り組みが英国のような国からも手本とされるような時代がくれば良いなと感じました。
このテーマについては次のLGAのウェブサイトでも紹介されています。
http://www.local.gov.uk/web/guest/publications/-/journal_content/56/10171/3630072/PUBLICATION-TEMPLATE
[オリンピックとパラリンピック開催が未来に与える影響]
本原稿を記している間に、ついにロンドンオリンピックが開幕しました。一方、次の次となる2020年のオリンピック・パラリンピックに向けては東京がスペインのマドリード、トルコのイスタンブールと共に3つの立候補市の1つに選ばれ、2013年の9月には開催地が決定する予定です。
この招致活動の参考にもなればと思い、”Olympic and Paralympic Games: creating new opportunities for the future”(オリンピック・パラリンピック-未来に新たな機会を創り出す)と題したセッションにも参加しました。
説明の中心となったロンドン郊外のエセックス・カウンティのキャッスル議員は、LGAとしてのオリンピック・パラリンピック関係の業務を担当する委員会の委員長で、LGA総会の段階で進行中だった全国規模の聖火リレーを各自治体の協力を得て実現してきた方で、これを通じ地域コミュニティの皆が、特に若者が素晴らしい経験をしてくれている、ということを聖火リレーの実際のビデオ映像を交えながら熱心に説明していました。
羽生から聖火リレーはこれまでのところ大成功のように思えるが、難しかった点は、と質問したのに対し、キャッスル議員が2つあると答えてくれました。
1 IOCからはオリンピックのマークや名称使用について様々な制限が示され、調整が事務的に大変だった
2 2005年のロンドン開催決定後、特に2008年のリーマンショックで経済情勢が悪化したためスポンサー企業、自治体も含め賛同を得るのが大変だった、まずは先にやらねばならないことがある、という状況になってしまった
これに付随して、あまり早く準備を始めてしまうと飽きてしまうのでタイミングを良く考えた方が良い、と2020年は東京に決まったかのようなアドバイスももらいました。
また、司会のフローレンス議員は、国会のあるウエストミンスターからテムズ川を隔てたランベス区の「内閣」の教育・スポーツ担当でもありますが、2-3年前は「オリンピックなんかに無駄な金を使って!」と文句を言っていた人たちも、今は熱い思いでオリンピック開催を待っている、と言っていました。
また、ウェスト・ミッドランド地方のオリンピック準備組織の代表で、LGAの取り組みを元オリンピック選手として支えてきた元5000M世界記録保持者のムーアクラフト氏は、11歳の時に東京オリンピックを見て感動したのが自分の選手となった原点であると仰っていました(残念ながら、怪我等でオリンピックでのメダルには縁の無かった方なのですが)。
改めて調べてみると議員2人はそれぞれ保守党、労働党でしたが、それでも大変いいムードの分科会でした。スポーツの持つ力を思い知らされます。
日本では、東京招致の動きに対してまだそれほどムードが盛り上がっていないようですが、震災からの日本の復興を海外にアピールする意味でも、明るいニュースの少ない若者世代に前向きなチャレンジの機会を提供する意味でも、貴重な機会になるのではないかと改めて感じました。
ロンドンオリンピック・パランリンピックについては当事務所から下記リンクをはじめとして様々なレポートを行っていますが、引き続きその成果も含め発信していきたいと考えていますので、今後ともご注目ください。
(ご参考)
自治体国際化フォーラム2012年5月号特集「2012年ロンドンオリンピック・パラリンピック大会の動向」
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/pdf_271/04_sp.pdf
クレア・メールマガジンvol.31「いよいよ明日開幕!ロンドンオリンピック直前特集号」
http://www.clair.or.jp/j/mailmagazine/backnumber/2012/07/clair_vol31_201226.html
[その他]
このほかにも、ツイッターをどのように行政サービスに利用するかといったプレゼンテーションがあったり、2012年11月から導入が予定される警察・犯罪委員長を公選で選ぶ新たなシステムについて、どのように制度を運用すればうまく機能するのかといったことについて真剣な議論が交わされていました。こうした英国自治体の興味深い動きについては今後もマンスリーレポートなどを通じて随時報告してまいります。
(文責:所長 羽生雄一郎)
2012年07月19日
国際交流基金ロンドン日本文化センター主催「Japanese Plus」講座に参加しました。
2012年6月27,28日、国際交流基金ロンドン日本文化センターで行われた上級者向け日本語講座(日本人以外が参加者)に、当事務所から特別ゲストとして3名が参加しました。
当事務所職員からは、それぞれの地元の方言を駆使しながら、出身地の紹介を行いました。
当日の様子について、国際交流基金ロンドン日本文化センターのホームページに紹介されています。
【国際交流基金ロンドン文化センターホームページに移動(英語表記)】
2011年08月04日
英国地方自治体協議会(LGA) 年次総会に参加
2011年6月下旬に英国中西部の都市バーミンガムで3日間に渡り開催された、イングランド・ウェールズの地方自治体及びその関係機関の全国組織「英国地方自治体協議会(Local Government Association)」(日本の地方六団体をひとまとめにしたような組織)の年次総会に参加しました。総会は「会議セッション」と「各地方自治体及び関係団体によるブース展示」に大別され、当事務所は会議出席による情報収集及び展示会場でのブース運営を行いました。
この総会の出席者は主に各自治体の議員ですが、これに加えて、事務方トップの事務総長や部長クラスの職員なども合わせて1,500人ほどが参加。ワークショップなどに出席する一方、会議の合間のティータイムなどには各展示ブースを見て回る流れになっていました。
クレアロンドンの今年の展示は一昨年来の試みとして、英国自治体に関心を持ってもらえそうな日本の自治体施策の事例(ケーススタディ)を紹介しました。
(1)介護保険制度の説明及び自治体での高齢化施策の実施状況 (群馬県、静岡県の取り組み)
(2)コミュニティバスの運営:生活バスよっかいち(四日市市)
(3)災害からの復興(住宅再建):阪神大震災の経験から (神戸市)
(4)シティプロモーション:地域産品(甲州ワイン)を活用した地域情報発信 (山梨県)
(5)シティプロモーション:ポップカルチャーを活用した地域情報発信(練馬区ほか)
今回の会議には史上初めて、現職の首相であるキャメロン首相が参加したことに加えて、クレッグ副首相など他の中央政府関係者も顔を出し、現在の連立政権が標榜する「地方分権」にかける意気込みが伺われました。そして、最終日にはアンドリュー・ランズリー保健相が当事務所ブースを訪問。介護保険制度のケーススタディの説明を聞き、資料を持ち帰ってくれました。高齢化で一歩先を行く日本の状況に、英国の政府・自治体も関心を寄せています。
2011年07月20日
小曽根真氏ジャズコンサート
7月16日、在エディンバラ総領事館の開館20周年を記念して、日本を代表するジャズ・ピアニスト小曽根真氏とグラスゴーを拠点に活躍するサックス奏者トミー・スミス氏によるコンサートが、エディンバラのセント・メリーズ大聖堂で開催されました。
このコンサートは総領事館、スコットランド日本協会、JLGCが共催したもので、当日は400人以上の聴衆が集まり、盛会のうちに終了しました。
2010年12月03日
欧州地方自治体会議(CEMR)主催の会議に出席
平成22年10月28、29日の2日間にわたってフランス・ボルドー市で開催された「欧州地方自治体会議(CEMR)」ほか主催の会議「ボルドー2010(Bordeaux 2010)」に出席しましたので、下記の通り報告致します。
CEMR(正式名称はCouncil of European Municipalities and Regions)は、欧州41カ国にまたがる50以上の地方自治体及び地域政府の代表団体がメンバーとなっている組織です。英国からは、地方自治体協議会(LGA)のほか、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの自治体の連合組織がメンバーとなっています。CEMRは、メンバー組織が参加する会議を毎年開催しており、今回の会議は、「考察の時(A Time to Reflect)」とのテーマを掲げ、CEMRのほか、フランス自治体・地域組織欧州連合(AFCCRE)、ボルドー市、アキテーヌ州の主催で実施されました。欧州の地方自治体・地域政府関係者が多数出席し、変わりゆく欧州における自治体・地域組織の現状や問題点、来年創立60周年を迎えるCEMRの今後の課題等に関するスピーチが行われたほか、経済の衰退と再生を経験した都市の例なども紹介されました。
【Alain Juppéボルドー市長(元フランス首相)によるスピーチ】
・本会議の目的は、欧州の団結及び現代における欧州の共通の目標について考察することである。
・EUの拡大プロセスは現在、非常に微妙な段階にあり、恐らく、これ以上加盟国が増える前に、現加盟国の結束強化が必要であろう。
・日本などと同様、欧州の国々も、新興国によって経済大国としての地位が脅かされている。世界の先導役を担うのは、今やG8ではなく、G20である。G8のEU加盟国は4カ国であるが、G20のEU加盟国も同様に4カ国のみである(つまり増えていない)。
・EUが多分に官僚的な機構である一方、地方自治体及び地域政府は、少なくとも民主的な行政体としてその役割を果たすことができる。
・EUにおいて変革を推進するのは都市である。EU圏内の人口の75%は都市圏に居住しており、GDPの85%は都市圏で生み出されている。
・住民が最も信頼を置く行政体は、中央政府ではなく、地方自治体である。地方自治体は、この事実に誇りを持ち、主張する権利が十分にある。
・都市は、自らを、「変革の実験室」として見なすべきである。
【経済の衰退と再生を経験した3都市の代表者によるスピーチ】
*Ibon Aresoスペイン・ビルバオ副市長
・ビルバオ市は、経済構造変革プランを実行することによって、重工業主導型経済からサービス業主導型経済へと移行した。このことによって、我が市は、新たな投資と人材の誘致、そしてより良い雇用を提供するため、快適な都市環境と豊かな文化的環境を創出する機会を与えられた。
・ビルバオ市はまた、大規模な都市のクリーンアップ計画を実行し、より革新的な方法での地域スペースの再利用を進めた。これによって、新たな産業の創出がもたらされた。
*Karine Danielフランス・ナント副市長
・ナント市の経済は、かつては造船業に依存していたが、特に文化面に焦点を当てたサービス業主導型経済へと移行したことで復興に成功した。
・文化面への投資が、その他の分野の経済活動を支え、より幅広い意味での都市経済の復興を可能にした。
・また、ナント市は再開発の一環として、造船所があった地域を再開発し、その地域と市の他地域をトラムでつなぎ、交通網を整備した。
*Elizabeth Cameron(グラスゴー市議会議員)
・グラスゴー市は、刷新、適応、再生というプロセスを経て経済的困難を克服した。
・グラスゴー市は、かつては繁栄を謳歌し、大英帝国では国内第二の都市であった。しかし、1930年代の恐慌で全てを失った。
・しかし現在、グラスゴー市は、国際会議を含む多くの会議の開催地となっており、またビジネス・ツーリズムで訪れる人々も多い。
・グラスゴー市は、世界の他都市に先駆け、アート(芸術)を都市再開発の手段とすることに成功した。
・グラスゴー市のかつての港湾地域は、現在は国際的な金融地区に生まれ変わっている。
・グラスゴー市の経済再生10ヵ年戦略は、グラスゴー市の価値を更に高め、全ての住民と繁栄を共有し、そして経済環境を改善することを目的としていた。
・しかし、同戦略は、2007年に経済危機が始まった頃に策定されたものであったため、その後、更に、経済復興を目的とした10ポイントプランを策定した。
・「増加税収財源措置(TIF)」の利用が英国でも可能になれば、グラスゴー市に新たな経済再生の機会をもたらすと思われる。
・2014年にはグラスゴー市でのコモンウェルスゲームスの開催が決まっており、大きな経済効果をもたらすことが期待されている。
【Anders Knape CEMR副会長、スウェーデン地方自治体・地域政府協議会会長によるスピーチ】
・来年に創立60周年を控え、CEMRは今、転機を迎えている。
・過去60年の間に、冷戦は終焉し、EUは拡大した。その結果、CEMRのメンバー組織である地方自治体・地域政府の全国組織は、古い組織と新しい組織が共存することになった。
・地方自治体・地域政府の全国組織について指摘できることは、組織間で規模と資金力に差があるという点である。例えばスウェーデン地方自治体・地域政府協議会は、規模、資金力の点で、世界でもトップクラスにある。その一方で、小規模な組織は、資金繰りに困窮しているという現実がある。
・CEMRにメンバー組織がある国のうち、EU加盟国は27カ国、EU非加盟国は14カ国である。この14カ国の組織も、EU加盟国の組織と同様、CEMRの活動に積極的に関わることが重要である。
・CEMR内には現在、17の作業グループが存在している。これは多過ぎると思われ、統合、合理化により、CEMRと自治体の関係を強化する必要がある。
・投票によって選ばれるCEMR内の役職に就いていない地域の政治的リーダーを、CEMRの活動により積極的に関与させるべきである。
・CEMRはまた、より新しいメンバー組織を、CEMRの活動により積極的に関与させるべきである。CEMRは、排他的なクラブのようであってはいけない。
・私が指摘すべき最も重要な点は、CEMRは、メンバー組織とより密接に協働する必要があるということである。
2010年10月20日
全国地方自治体事務総長・上級職員協会(SOLACE)年次総会に出席
平成22年10月12日から14日の3日間、カーディフ市において開催されました全国地方自治体事務総長・上級職員協会(SOLACE)年次総会に出席しました。概要を次のとおり報告します。
SOLACEはその名のとおり地方自治体事務部局の長である事務総長及び幹部職員の連絡組織であり、毎年この時期に年次総会が開催され、多くの自治体から事務総長又は幹部職員が出席しています。今年は、同総会の一週間後である10月20日に財務省が「2010年支出見直し」を発表する予定となっており、その中で20%、30%にも上る公共支出が削減されることが見込まれていたため、会議テーマは「嵐に耐え抜く(Weather the storm)」とされていました。会議のプログラムは、大ホールでの講演と小グループに分かれての勉強会とで構成されており、今後の政府債務予測、保守党・自民党連立政権のスコットランド等への地方分権政策、ITを利用した地方自治体サービスの改善、経済不況下における精神活力の維持という精神医学に関する講義など、中央政府の大幅な支出削減に備えた幅広い内容のプログラムが組まれていました。
【地方自治担当大臣の講演】
総会の最後には、グレッグ・クラーク地方自治担当大臣が講演を行いました。講演概要は以下のとおりです。
前労働党政権下では中央集権化が進められ、コミュニティ・地方自治省自体も地方自治体を過剰に規制する主体となっていた。中央政府が地方自治体に細かな指示を出したり、地方自治体に対して様々な報告義務を課したりするトップ・ダウンのやり方は非効率であり、この結果、公共サービスに関する意思決定に参画できていると感じている国民はわずかであり、これが国民の欲求不満状態を招いている。現連立政権での地方分権政策は、政権樹立直後に発表した新政権政策プログラムの中でも重要政策として位置づけられている。5年間の任期を約束している本政権では、よりよい政策は地域社会から生まれる、ボトム・アップによって作られるという考えの下、地域住民及び地域社会へより権限を与えることを目指している。そしてこれまでの単なる形式的な公共サービス(Public Service)から、住民サービス(Personal Service)及び地域社会サービス(Community Service)への転換を図りたい。
何故分権が必要なのか。それは、地域が自己管理能力を高め、イノベーションを起こすことができるようになること、そして地方には行政サービス現場としての専門性があり、地域住民に対する説明責任をよりよく果たせるからである。
このため具体的には、中央政府が地方を束縛してきた不必要な法的規制及び政策目標値を廃止し、中央政府の指示や介入を除去することにより、地域社会の潜在的可能性を引き出したい。さらに具体的には、中央政府の意向を押し付ける典型的政策であった包括的地域評価制度を既に廃止している。この包括的地域評価制度においては、地方自治体がどのように事務処理を行うべきかを中央政府が細かく基準化し、それに基づく評価が行われていた。加えて、条例に対する中央政府による関与を見直すとともに、地域開発公社の廃止とそれに代わる組織の構築によって地域レベルでの戦略を策定していく。一方地域社会においては、地域に存在する資産の有効活用や、地域社会の実情に合った住宅政策及び都市計画を進めるために、地域社会の権限強化を図りたい。予算及び財源の問題に関しては、財源に対する自治体の権限を強化するために、現在コミュニティ・地方自治省と財務省との間で特定補助金の一般化について検討を進めている。同時に、これまで自治体が提供してきたサービスを自治体以外の者が提供できるようにする政策も実施する。既に発表しているフリースクール(親、教師、チャリティ団体及び企業等が設立する学校で、地方自治体の権限が及ばない)はその具体例の一つであり、今後も相互扶助組織による公共サービスの提供等を検討していく。加えて、カウンシル・タックスの税率に上限を設けるキャッピング制度を廃止し、一定基準を上回る税率の引き上げを行う際には住民投票で住民の賛否を問う制度を導入する。さらに、公営住宅新築に対しての新しい補助スキームや、地域主導予算も導入する。
現政権の地方分権政策では透明性の向上及び説明責任の強化も大きな柱となっている。市民が公共サービスについての重要な意思決定を行うために必要な情報が提供されるべきであり、今後、コミュニティ・地方自治省及び地方自治体の歳出については詳細な情報をインターネットで公開する。またこれは、国民の利便性向上のため、すべての情報を「Data.gov.uk」に集約して公開することとしている。
マイクロクレジットを創設して2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスの活動は、初めは42の家族に27ドルを貸し付けることから始まった。とても小さな活動であったが、それを繰り返し続けることで、今やマイクロクレジットは全世界的な融資手法となり、特に発展途上国において人々が貧困から脱することを可能にし、大きな成功を収めている。本政権における地方分権政策もこの例に倣いたいと考えており、地域社会において何か大きなことを成し遂げて欲しいというのではなく、地域に根ざした小さな活動を継続することを大切にしてもらいたいと考えている。それが結果的には大きな実を結ぶことになると信じている。
地方分権政策に関する今後の動きとして、10月20日に「2010年支出見直し」が発表される予定であり、地域主義法案(Localism Bill)が今国会に提出される予定である。そして、より具体的にどのような権限を地方へ移譲していくかについて来夏までにコミュニティ・地方自治省から首相へ提案を行うこととなっている。このすべての過程において、政府は地方の意見を聴きながら政策策定を進めていくこととしており、現在、コミュニティ・地方自治省の分権チームには、エセックス・カウンティ・カウンシルのポリシー・ディレクターであるブランドン・ハラム氏が地方自治体協議会(LGA)から派遣され、議論に加わってもらっている。最後に、本政権が強調している地域主義とは、絶対的に必要とされる事務のみを中央政府が担い、それ以外のすべての事務はできる限り住民に近いところで実施していくという考え方である。また地方分権化とは地域住民、地域社会及び地域組織に権限を移譲することを意味する。そして、大きな社会(Big Society)とは、社会、地域住民及び地域社会がより大きな権限及び責任を持ち、より良いサービスとそこからの便益を得るためにそれらの権限及び責任を行使していくことを意味する、との3点を強調してこの講演を締めくくる。
【インターナショナル・ディナー】
会議初日の夜にはカーディフ市の主催によりカーディフ城内においてインターナショナル・ディナーが催されました。出席者は主に海外からの会議参加者と英国公的機関の国際担当部局の職員となっており、出席者の一人としてオーストラリア・モスマン市からヴィヴ・メイ ジェネラル・マネージャーが出席されていました。モスマン市は現在、滋賀県大津市との間で姉妹都市提携の検討を進めており、当協会・シドニー事務所とも深いつながりがあって、姉妹都市提携を支援する当協会の活動を高く評価されていました。その他、ウェールズを拠点に地方自治体向けのビジネスを行っている民間企業の出席者からは、平成20年2月に当ロンドン事務所が開催した日英交流セミナーに参加した際の思い出話を聞くこともでき、海外の方々から当協会の活動が認知され、評価されていることは大変喜ばしいことと感じられました。
2008年07月01日
ボーンマスで開催されたLGA年次総会に出展・出席
イングランド南西部海岸沿いの都市ボーンマスで開催されたLGA(Local Government Association)年次総会に出席・ブース出展をしました。
この会議には地方議会議員等を中心に約1500人が参加し、健康、飲酒問題からリーダーシップまで、自治体が抱える課題について幅広く話し合われました。当事務所は会議とあわせて開催されたブース展示にも出展し、事務所の事業、日英修好通商条約締結150周年記念イベント、日本の観光案内まで幅広くPRを行いました。
2008年05月26日
欧州評議会の欧州地方自治体会議へ参加
フランス、ストラスブールで開催された欧州評議会(Council of Europe)の欧州地方自治体会議(The Congress of Local and Regional Authorities)に参加しました。4日間にわたって、多くの会議、部会が行われ、様々な問題が話し合われたこのかいぎに、日本から荒井奈良県知事、倉田池田市長が招待されました。それぞれの地域、日本の地方自治体等について伝えたお二人の講演には、ヨーロッパの地方自治体関係者から多くの質問が寄せられていました。
2008年05月07日
グロースターシャー県パートナーシップ会議に出席
グロースターシャー地域コミュニティ会議の主催で開催された、グロースターシャー県の地域パートナーシップ会議(The Gloucestershire Rural Partnership Conference 2008)に出席しました。会議にはグロースターシャー県内の機関を始めとする様々な団体からの出席者が集まり、地域活性化の成功事例の紹介や、地域開発公社からの発表などが行われました。
2008年03月14日
ロンドン2012セミナーに出席
イーストロンドン大学のロンドンイースト研究機関が開催した、2012年ロンドンオリンピックの影響に関するセミナーに出席しました。
地方公務員海外派遣プログラムの最終報告会を実施
地方公務員海外派遣プログラム参加者による、研修の最後を飾る報告会を研修先のバーミンガム大学で実施しました。平成19年度は奈良県からの研修生でしたが、「Health Promotion Policy –strategies on a local level-」と題して、英国、特にバーミンガム近隣の健康促進政策について、背景やその原因について考察した後、自治体のデータや実践例(肥満問題、アルコール問題、禁煙問題、コミュニティでのアプローチなど)についての発表がありました。
2008年03月13日
都市と農村の連携に関する会議に参加
3月13日と14日の二日間に渡ってドイツのルッケンワルデ市で開催された、都市と農村部の連携に関する会議に出席しました。会議の席ではブランデンブルグ州の取り組みの紹介があった一方で、当事務所からは日本の現状や地域間の連携事例についての発表を行いました。
2008年03月12日
自治体幹部招へいセミナー参加者会議を開催
平成20年3月12日に、これまでにセミナーに出席された方々をお招きして、研修の報告会を実施しました。
会議では、アーガイル アンド ビュート・カウンシルのジェームズ・マクレラン氏、ゲイツヘッド・カウンシルのイアン・ラザフォード氏から平成19年度セミナーの報告をしていただき、またクルーウェ アンド ナントウィッチ・バラカウンシルのブライアン・シルベスター氏から平成12年度と平成15年度のセミナーの感想についてのお話があった後、意見交換が行われました。
さらに、日本大使館、国際交流基金、JETRO、JNTOなどの各機関からも日本の現状や取り組みについての説明があり、出席者の方々に日本に関する情報提供をすると共に、今後の協力関係の維持をお願いしました。
2008年02月25日
EU加盟国間の会議に出席
ベルギーのブリュッセルで開催された、EU加盟国間の格差縮小をテーマとした会議に、2月25日と26日の2日間クレアパリ事務所と共同で出席しました。
2008年02月11日
マンチェスターの名誉領事叙任式に出席
日本政府から新たにマンチェスター名誉領事に任命された、ピーター・ヘギンボサム氏の叙任式がマンチェスター市役所で開催され、当事務所からも叙任式に出席しました。
2008年01月30日
NALC会議に出席
「Local Leadership in Action」というテーマで開催されたNALC(全国パリッシュ・タウンカウンシル協議会)の会議に出席しました。会議では地方自治体の指導力を発展させる最新の政策について、政府や地方自治体の代表者などから事例を含めての説明がありました。
2008年01月29日
日英修好通商条約締結150周年関連記念事業検討会議に出席
エディンバラ総領事館で開催された日英修交通商条約締結150周年関連記念事業検討会議に出席しました。
当日はスコットランドを中心に日英の文化交流等に取り組んでいる団体の代表が集まり、それぞれが企画している関連記念事業について発表を行い、お互いの協力を確認し合いました。
当事務所としましては、日英人物誌セミナーと題して日本にゆかりのあるトーマス・グラバー(アバディーン)、ウィリアム・ジョージ・アームストロング(ニューキャッスル)、ウィリアム・アダムス/三浦按針(メドウェイ)の3人を生誕地において、これら先人の偉業を掘り起し、今後の日英関係のあり方を考えていく上でのよすがとするイベントを企画している旨の説明をしました。
2007年12月07日
C40 Workshop に参加
2005年10月にロンドン市長の提唱により創設された気候変動対策に取り組む世界の大都市の集まりであるC40 Citiesの交通部門のWorkshopが12月3日~5日にロンドンで開催されたので、オブザーバーとして参加しました。
Workshopは大ロンドン市とスウェーデン市による共催により行われ、会議の冒頭でスウェーデン副市長とともに挨拶に立ったリビングストン、ロンドン市長は次のように述べました。「大都市は地球全体の温室効果ガスの1/3を排出している。気候変動を抑制するための戦いは、大都市にとって、死活問題である。このWorkshopは、世界33の都市から100名以上の上級職員が各都市における二酸化炭素排出削減の優れた取組みを共有するために集まった初めてのものである。このような形で協働することにより、各都市は破滅的気候変動を阻止するための戦いの最前線に立つことになる。」
3日間に亘って行われたWorkshopは、1日目と2日目に会議、3日目に現場視察という構成で進められました。会議では2日間で8つのセッションが行われ、それぞれに“インフラ投資、土地利用計画と都市計画”や“交通需要管理:規制手段”等といったテーマが設けられていました。各セッションは、各都市の代表が交代で司会を努め、数都市からの優良取り組み事例などのプレゼンテーションの後質疑応答、という形で進められました。質疑では、単なる質問のみならず、他都市にアドバイスを求めたり、逆に他都市の施策に意見したりする姿もみられ、各都市が他の都市の優良取り組み事例を共有し、自らの施策に生かすべく熱心に取り組んでいる様子を見て取ることが出来ました。