活動記録
2010年10月29日
スピーカーシリーズ「New game; new rules…delivering public services 2010 and beyond」
1 テーマ:「New game; new rules…delivering public services 2010 and beyond」
2 日時:2010年10月18日(月)14:00~15:30
3 講師:Mr Aidan Rave(Director of Consulting and Interim, Pinnacle PSG)
概要は下記のとおりです。
Rave氏は、ドンカスター氏の副市長など地方自治体で勤務した後、現在地方自治体から委託を受け公共サービスを提供する民間企業に勤務している。
<英国の公共サービスと外部委託>
・英国は世界で最も公共サービスの外部委託が進んだ国の一つであり、この市場は年3200億ポンドを超え、GDPの6%を占め、120万人の雇用を生み出している。現在、この数字がさらに増加するか減少するか、また現在の状況が好機であるか否かということに関して大きな議論が起こっているが、どちらもあり得ると考えている。
・地方自治体は物品購入とサービスの提供に年間1000億ポンド以上を支出している。Business Service Association(民間・公共両部門に対し外部委託でサービスを提供する会社の代表)の調査によると、外部委託により10-30%のコスト削減を実現している。
・2010年支出見直し(Spending Review)において、地方自治体が大きな歳出削減を迫られることが明らかになり、後日その数字が27%に上ることが判明した。これは、誰もが経験したことがない規模である。
・また2012年は、高齢化社会が進む中、年金受給者が現役世代を上回り、福祉国家としての転換期を迎える見込みであり、地方自治体のサービス提供にも影響が出るものと思われる。
<政権交代後の公共サービス>
・前労働党政権は、公共サービスに多額の投資を行ったが、現連立政権の政策は現段階では不透明である。現在の経済情勢及び予算削減を考慮すると、何らかの変化は避けられないが、サービス利用者及び従来のサービス供給者からの反対、労働組合の抵抗や政治的圧力により、容易に実現できないだろう。
<今後求められるサービス>
・英国の公共サービス外部委託は成功であったと言えるが、今後は新たな挑戦が待ち受けている。
・単一的なサービスではなく、より多様なサービスと提供する必要がある。また、大きな社会(Big Society)との関係も重要である。組織をよりフラット化することにより、素早い対応を可能にし、消費者により近いポジションでサービスを提供する必要がある。
2010年10月20日
全国地方自治体事務総長・上級職員協会(SOLACE)年次総会に出席
平成22年10月12日から14日の3日間、カーディフ市において開催されました全国地方自治体事務総長・上級職員協会(SOLACE)年次総会に出席しました。概要を次のとおり報告します。
SOLACEはその名のとおり地方自治体事務部局の長である事務総長及び幹部職員の連絡組織であり、毎年この時期に年次総会が開催され、多くの自治体から事務総長又は幹部職員が出席しています。今年は、同総会の一週間後である10月20日に財務省が「2010年支出見直し」を発表する予定となっており、その中で20%、30%にも上る公共支出が削減されることが見込まれていたため、会議テーマは「嵐に耐え抜く(Weather the storm)」とされていました。会議のプログラムは、大ホールでの講演と小グループに分かれての勉強会とで構成されており、今後の政府債務予測、保守党・自民党連立政権のスコットランド等への地方分権政策、ITを利用した地方自治体サービスの改善、経済不況下における精神活力の維持という精神医学に関する講義など、中央政府の大幅な支出削減に備えた幅広い内容のプログラムが組まれていました。
【地方自治担当大臣の講演】
総会の最後には、グレッグ・クラーク地方自治担当大臣が講演を行いました。講演概要は以下のとおりです。
前労働党政権下では中央集権化が進められ、コミュニティ・地方自治省自体も地方自治体を過剰に規制する主体となっていた。中央政府が地方自治体に細かな指示を出したり、地方自治体に対して様々な報告義務を課したりするトップ・ダウンのやり方は非効率であり、この結果、公共サービスに関する意思決定に参画できていると感じている国民はわずかであり、これが国民の欲求不満状態を招いている。現連立政権での地方分権政策は、政権樹立直後に発表した新政権政策プログラムの中でも重要政策として位置づけられている。5年間の任期を約束している本政権では、よりよい政策は地域社会から生まれる、ボトム・アップによって作られるという考えの下、地域住民及び地域社会へより権限を与えることを目指している。そしてこれまでの単なる形式的な公共サービス(Public Service)から、住民サービス(Personal Service)及び地域社会サービス(Community Service)への転換を図りたい。
何故分権が必要なのか。それは、地域が自己管理能力を高め、イノベーションを起こすことができるようになること、そして地方には行政サービス現場としての専門性があり、地域住民に対する説明責任をよりよく果たせるからである。
このため具体的には、中央政府が地方を束縛してきた不必要な法的規制及び政策目標値を廃止し、中央政府の指示や介入を除去することにより、地域社会の潜在的可能性を引き出したい。さらに具体的には、中央政府の意向を押し付ける典型的政策であった包括的地域評価制度を既に廃止している。この包括的地域評価制度においては、地方自治体がどのように事務処理を行うべきかを中央政府が細かく基準化し、それに基づく評価が行われていた。加えて、条例に対する中央政府による関与を見直すとともに、地域開発公社の廃止とそれに代わる組織の構築によって地域レベルでの戦略を策定していく。一方地域社会においては、地域に存在する資産の有効活用や、地域社会の実情に合った住宅政策及び都市計画を進めるために、地域社会の権限強化を図りたい。予算及び財源の問題に関しては、財源に対する自治体の権限を強化するために、現在コミュニティ・地方自治省と財務省との間で特定補助金の一般化について検討を進めている。同時に、これまで自治体が提供してきたサービスを自治体以外の者が提供できるようにする政策も実施する。既に発表しているフリースクール(親、教師、チャリティ団体及び企業等が設立する学校で、地方自治体の権限が及ばない)はその具体例の一つであり、今後も相互扶助組織による公共サービスの提供等を検討していく。加えて、カウンシル・タックスの税率に上限を設けるキャッピング制度を廃止し、一定基準を上回る税率の引き上げを行う際には住民投票で住民の賛否を問う制度を導入する。さらに、公営住宅新築に対しての新しい補助スキームや、地域主導予算も導入する。
現政権の地方分権政策では透明性の向上及び説明責任の強化も大きな柱となっている。市民が公共サービスについての重要な意思決定を行うために必要な情報が提供されるべきであり、今後、コミュニティ・地方自治省及び地方自治体の歳出については詳細な情報をインターネットで公開する。またこれは、国民の利便性向上のため、すべての情報を「Data.gov.uk」に集約して公開することとしている。
マイクロクレジットを創設して2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスの活動は、初めは42の家族に27ドルを貸し付けることから始まった。とても小さな活動であったが、それを繰り返し続けることで、今やマイクロクレジットは全世界的な融資手法となり、特に発展途上国において人々が貧困から脱することを可能にし、大きな成功を収めている。本政権における地方分権政策もこの例に倣いたいと考えており、地域社会において何か大きなことを成し遂げて欲しいというのではなく、地域に根ざした小さな活動を継続することを大切にしてもらいたいと考えている。それが結果的には大きな実を結ぶことになると信じている。
地方分権政策に関する今後の動きとして、10月20日に「2010年支出見直し」が発表される予定であり、地域主義法案(Localism Bill)が今国会に提出される予定である。そして、より具体的にどのような権限を地方へ移譲していくかについて来夏までにコミュニティ・地方自治省から首相へ提案を行うこととなっている。このすべての過程において、政府は地方の意見を聴きながら政策策定を進めていくこととしており、現在、コミュニティ・地方自治省の分権チームには、エセックス・カウンティ・カウンシルのポリシー・ディレクターであるブランドン・ハラム氏が地方自治体協議会(LGA)から派遣され、議論に加わってもらっている。最後に、本政権が強調している地域主義とは、絶対的に必要とされる事務のみを中央政府が担い、それ以外のすべての事務はできる限り住民に近いところで実施していくという考え方である。また地方分権化とは地域住民、地域社会及び地域組織に権限を移譲することを意味する。そして、大きな社会(Big Society)とは、社会、地域住民及び地域社会がより大きな権限及び責任を持ち、より良いサービスとそこからの便益を得るためにそれらの権限及び責任を行使していくことを意味する、との3点を強調してこの講演を締めくくる。
【インターナショナル・ディナー】
会議初日の夜にはカーディフ市の主催によりカーディフ城内においてインターナショナル・ディナーが催されました。出席者は主に海外からの会議参加者と英国公的機関の国際担当部局の職員となっており、出席者の一人としてオーストラリア・モスマン市からヴィヴ・メイ ジェネラル・マネージャーが出席されていました。モスマン市は現在、滋賀県大津市との間で姉妹都市提携の検討を進めており、当協会・シドニー事務所とも深いつながりがあって、姉妹都市提携を支援する当協会の活動を高く評価されていました。その他、ウェールズを拠点に地方自治体向けのビジネスを行っている民間企業の出席者からは、平成20年2月に当ロンドン事務所が開催した日英交流セミナーに参加した際の思い出話を聞くこともでき、海外の方々から当協会の活動が認知され、評価されていることは大変喜ばしいことと感じられました。
2010年10月14日
JAPAN祭り2010に初出展-日本の文化と地方をPR
2010年9月18日にロンドン市内で開催された「JAPAN祭り2010」に初めて出展し、主にJLGCに勤務する職員の派遣元自治体の観光パンフレット配布をはじめ、様々なツールを使って日本の各地方のPR活動を行いました。
JAPAN祭りは今年で2回目となる日本文化紹介イベントで、主催は日英国際理解を促進するために活動しているジャパン・ソサエティと英国日本人会。昨年度は3万5千人が集まり大混雑したため、会場面積を2倍に増やしたところ、主催者発表で今年は5万人が会場に足を運んだそうです。1日限りのこのイベント、メインステージではのど自慢、合唱、盆踊り、生け花パフォーマンスが、武道ステージでは、柔道、剣道、合気道などが披露され、また、ファミリーステージでは太鼓演奏や日本舞踊、お神輿の練り歩きが行われました。
さらに、140を超える屋台(ブース)が出展しましたが、その半分以上が飲食物の販売で、焼そば、カツカレー、焼き鳥、お好み焼き、豆腐、日本酒、和菓子などが扱われていました。この他、漆器や着物・浴衣の展示販売、習字や俳句、折り紙の体験、それから旅行代理店の屋台も5つほど出展し、日本への旅を勧めていました。
前述のとおりJLGCは派遣元自治体の観光情報の提供を行いましたが、観光の中でもテーマを特化しようと取り上げたのが「温泉」。職員の出身自治体は群馬、静岡、岐阜、神戸といった温泉どころから来た職員が多かったことからの発想です。幕末から明治にかけて日本を訪れた英国人の温泉(文化)との出会いについてのパネルを展示し、当時、英国人が持った異文化に対する見方を紹介したり、温泉への入り方を紹介したマンガ小冊子を配布したりしました。また、温泉地から提供していただいた入浴剤や手ぬぐい等を無料でプレゼントし、各地の観光PRを行いました。同時に、これまで訪れた観光地・温泉地や、これから行ってみたい観光地・温泉地等を尋ねるアンケートも行いました。また、横2.4m、縦1.7mの巨大日本地図を用意し、行ったことのある日本の場所に、日本で体験したことや印象に残ったことなどを小型の旗に書いて貼ってもらうアクティビティ「Map of JAPAN」も行いました。
最終的にはアンケートが200、旗に書いていただいたコメントが400以上と、予想以上にたくさんの方に訪問をしていただきました。日本を訪問したことのある方のうち、行ったことのある観光地・温泉地は、人気の高い順に「京都」「東京」「箱根」「別府」「大阪」、今後行ってみたい観光地では「北海道」「沖縄」「別府」「富士山」「京都」となりました。一方、日本を訪問したことのない来場者の多くが、行ってみたい観光地として「東京」「京都」「富士山」を挙げていました。初めての日本訪問では東京・京都といったよく知られた場所に行きたいという声が多いのですが、訪問が2度目以降となると旅行者の興味も各地に分散するようです。ただ、京都は再び訪れたいという声が多く、人気の高さが伺えました。また、意外にも英国人の心をとらえて離さなかったのが「下駄」。展示の下駄を見て「カッコイイ!」「どこで買えるのか」「履いてみたい」「健康にもいいんでしょ」といった声が相当数あり、男女問わず人気でした。
英国から日本へは長距離の移動を伴うため、旅行先として選択してもらうには工夫が必要ですが、JLGCでは、JAPAN祭りのように日本に関心がある層が来場するイベント等の機会を捉えて、日本の各地方のPRを効果的に実施していきたいと考えています。
JAPAN祭の会場の様子
JLGCのブースの様子
JLGCブースに展示し好評を博した下駄
2010年10月13日
スピーカーシリーズ「地方自治体の海外における外客誘致の取り組み」
1 テーマ:「地方自治体の海外における外客誘致の取り組み」
2 日時:2010年9月27日(月)14:00~15:30
3 講師:日本政府観光局ロンドン事務所 所長 冨岡秀樹様
概要は下記のとおりです。
<日本政府観光局(JNTO)について>
・海外における観光宣伝、外国人観光旅客に対する観光案内その他外国人観光旅客の来訪の促進に必要な業務を効率的に行うことにより、国際観光の振興を図ることを目的として設立された独立行政法人で、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ソウルなど世界13都市に海外事務所を持つ。
・Vision:インバウンド・ツーリズムの振興を通じて、「観光立国」の実現を目指す。
Mission:ビジット・ジャパン・キャンペーンに貢献し、2010年までに訪日外国人旅行者数1000万人を実現させる。
・主な事業活動
外国人観光旅客の来訪促進、外国人観光旅客の受入対策、通訳案内士試験の実施に関する事務代行、国際観光に関する調査及び研究、国際観光に関する出版物の刊行、国際会議などの誘致促進・開催の円滑化(MICE (Meeting, Incentive Travel, Convention, Event/Exhibition)の推進)。
<シンガポール市場について>
・2006年のシンガポール事務所開設時から約4年半、所長を務めた。
・シンガポールは小さな国であるため、約500万人の人口に対し年間約1000万人が国外を旅行している。特に日本は旅行先としてトップクラスの人気であり、人口比の訪日率は世界第4位である。
・四季、自然、テーマ―パークが人気である。また、現時点では北海道が人気である。これは、北海道や観光連盟がプロモーション活動を続けてきた成果である。
<JNTOシンガポール事務所の取組>
・シンガポール事務所開設から3年連続で、日本への渡航者が大幅に増加した。
・シンガポールの旅行業者協会であるNATAS(National Association of Travel Agents Singapore)が主催するNATAS Travel 2010(NATAS旅行販売フェア)にジャパンパビリオンを出展し、日本の地方自治体、自治体国際化協会、民間企業などがブースを並べた。日本の地方自治体は現地の旅行会社と一般客に、観光地としての魅力をアピールすることが目的で出展している。旅行会社が多数出展し旅行商品を売る場でもあること、旅行商品を購入するとスポンサーである保険会社などから特典を受けられることから、非常に多くの一般客が参加した。
また翌日日本の地方自治体と旅行会社の商談の場を設定した。
・その他に、ホームページやフェイスブックを活用したキャンペーン、日本の地方自治体との共同新聞広告、バスラッピング広告、地下鉄駅におけるメガ・ピラー広告、旅行雑誌「Escape」へ日本特集冊子の折込などを実施。
<地方自治体の取組>
・岐阜県、熊本県、旭川市では、観光や物産販売のためトップセールスを行った。シンガポールでは食が大切なアピールポイントである。
・北海道・北東北三県シンガポール事務所が一般向け観光情報の提供などを行っていたが、2008年3月に閉鎖された。閉鎖後、当該地域に関するJNTOへの問い合わせが30%増加した。