活動記録
2008年05月13日
スピーカーシリーズ「英国の地方自治体の近況」
●テーマ:「英国の地方自治体の近況」
●日時:2008年5月13日 14:15~15:30
●講師:Dr, Peter Clarke, Ovum Principal Analyst
ご講演要旨
【英国の地方自治の概要】
(1)地方自治体の数は以下のとおり
カウンティ 28
ロンドン・バラ 33
メトロポリタン・バラ 36
ユニタリー 55
ディストリクト 204
北アイルランド・ユニタリー 26
スコットランド・ユニタリー 32
ウェールズ・ユニタリー 22
(2)自治体構成
リーダー・内閣システム 316(81%)
直接公選首長 12(3%)
(直接公選首長と内閣システム12, 直接公選首長とカウンシル・マネージャー1)
その他59%の小規模自治体は、従来の委員会制を基にした修正委員会制を採用
【地方自治体の現代化(modernization)とITについて】
(1)概要
政府はITによる地方自治体の現代化を進めている
・住民本位の地方自治行政への活用
・効率的な行政サービスの提供
(2)予算
1997年以降、700億ポンド(約14兆円)が公的部門のITに支出されている
・ハードウェアを含めると1400億ポンド(約28兆円)
・700億ポンド(約14兆円)のうち、350億ポンド(約7兆円)が地方自治体に使われてきた
(3)政府レポート等
1998年以降、政府は様々なレポート等により、IT化を推進してきた。
・“情報化時代(Our Information Age)” 1998年
・“政府の現代化(Modernizing Government)” 1999年
・“電子政府戦略(e-government strategy)” 2000年
・“国家電子政府戦略(National Strategy for e-government)”
・“地方電子政府戦略(Local e-government Strategy)”
・“効率化レポート(Efficiency Review)”
・“地方自治体の変革(Transformation of Local Government)”
・その他、予算策定の基本方針となる包括的支出見直し(Comprehensive Spending Review)にも、IT化は重要施策として盛り込まれてきた。
(4)具体のIT化施策
・地方自治体におけるIT化(2002年副首相府):2005年までに優先的なサービスの100%の電子化を目標
・2005年電子政府目標(2004年副首相府):利用しやすいサービスの効率的提供、地方のサービス向上のための中央政府内の連携等
・2005年における優先順位(2004年副首相府):優先的なサービス(学校、コミュニティ、電子政府調達等)、転換の方向性(オンライン決済サービス等)
・国家プロジェクト(National Project):福祉、地方税、電子政府調達、環境サービス、電子取引基準、地方自治体のウェブサイト、学校への入学申請等
・重要課題(Main Challenge)(2004年副首相府):電子化(‘e’)を地方自治体サービスの中心へ
・効率化プログラム(Efficiency Programme):2004年~2011年、2008年80億ポンド(1.6兆円)
(5)挑戦及び課題
・PPPの活用:バーミンガム、リバプール、サマーセット、サフォーク等
・ITに係る予算制約とサービス向上への圧力
・自治体間のシステム共有:財政、人事、政府調達等
・地域協定(LAA)、地域連携協定(MAA)等による自治体等の連携・協力
・事業資源計画(Enterprise resource planning):グラスゴー、マンチェスター、ウォルバーハンプトン
(6)民間の役割
・競争による技術向上
・強制競争入札による公正な競争
(7)地方自治体のITマーケット
・パブリックセクターのITマーケットは2007年に10.6%、2008年に12.1%成長
・大手企業による大口契約の占める割合が大きい(Capita, BT, Mouchel, IBM等)
【地方自治体とコンジェスチョン・チャージについて】
・ロンドンの公共交通は、コンジェスチョン・チャージ導入以前から随分改善していた
・PPP(Public Private Partnership)の発達、IT技術、CCTVなどの発達による実現
・公共交通への追加的歳入や二酸化炭素排出量抑制へのインセンティブ
・他国(シンガポールやノルウェー等)においては、既にコンジェスチョン・チャージは導入されていた
・英国内においても、ロンドン以外の都市(マンチェスター、グラスゴー、ダービー、レスター、ノッティンガム)などが導入を検討している。しかし、エディンバラやケンブリッジでは、住民投票で同制度の導入が否決された
(以上)